工機ホールディングス(旧日立工機)
企業名 | 工機ホールディングス株式会社 |
本社所在地 | 東京都港区 |
設立 | 1948年12月18日 |
売上収益 | 連結:1,900億(2020年期) |
時価総額 | 870億円(2017年7月上場廃止時) |
資本金 | 1億円 |
事業 | 電動・空気工具の製造、開発 |
従業員数 | 連結 6,790名 |
親会社 | KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ) |
関連企業 | Metabowerke GmbH |
企業戦略 | 既存製品の性能向上・低価格化・他社シェア奪取 |
HiKOKI(ハイコーキ)の製品開発指向性
プロ向け電動工具 | DIY向け電動工具 | ||
プロ向け園芸機器 | 家庭向け園芸機器 | ||
空気工具 | 清掃機器 | ||
アウトドア | 家電製品 |
工機HDが展開する主力ブランドHiKOKIはプロ向け工具を中心とするブランドです。園芸・清掃機器を含めたラインナップも揃えていますが、競合他社にあと数歩及ばない器用貧乏さも目立ちます。
他社の動向に最も敏感なメーカーであり、他社が話題性や売れ行きの良い製品を販売すると性能を改善した後追い製品を積極的に展開する傾向があります。
日立グループ時代には電動工具に縛られない製品開発も積極的に進めていましたが、KKR以降はプロ向け電動工具に絞った性能向上モデル・他社追従路線を強めており、園芸機器・DIY・家庭向けの製品開発に対しては比較的消極的な傾向が目立ちます。
主力は18V-36V兼用のマルチボルトシリーズ
HiKOKIの主力商材は、従来の18Vバッテリーと新型の36Vバッテリーを兼ね備えたマルチボルトシリーズです。
従来の18Vシリーズとの互換性を保ったまま36V高電圧化に対応するコンセプトによって、新しいバッテリーシリーズながらも既存の日立工機ユーザーから好意的に受け入れられられています。
小型電動工具シリーズに関しては、スライド10.8Vシリーズと差し込み10.8Vシリーズを並行展開しています。製品単体で見ればコストパフォーマンスに優れた隠れた良品と言える製品ですが、シリーズそのものとしては製品展開に乏しく、他社の10.8Vシリーズに比べると印象が薄くなってしまっています。
最近はウェブ通販を強化、コスパに優れる高性能工具
最近のHiKOKIはAmazonを中心としたネットモール販売に力を入れており、Amazon限定の初回修理保証付き電動工具やバッテリー1個仕様などの柔軟性の高い販売手法を推進しています。
プライムデーへの参入やクーポン割引販売も積極的に行っており、通常販売の時でも安い価格で販売しているのも見逃せないポイントです。さらに、保証特典を付けるなどの特典を盛り込むことによって他社から移行するユーザーを積極的に獲得しています。
1流メーカーのプロ向け充電式電動工具ブランドとしては優れた価格を設定しており、不定期に行われる割引キャンペーンなどを組み合わせることで、他社の追随を許さない圧倒的なコストパフォーマンスによって各種電動工具を揃えられます。
ただし、この低価格設定は、直販またはそれに準じる代理店が行っているものと考えられ、相場販売価格を大きく下回る価格設定に対し、日立工機時代から協力関係にある販売店がどのように考えるか危うく感じる部分もあります。
低調な経営状態を脱出できるかが今後のカギ
工機HDの技術力・開発力は、数ある電動工具メーカーの中でも世界トップクラスのメーカーですが、経営のバックグラウンドにあるさまざまな事情が足を引っ張っており、業界内での存在感の維持が難しくなってきている印象があります。
日立グループの離脱以降、米国のPEファンド KKR傘下となって新たな経営陣を加えさまざまな試みが行われましたが、日立工機時代から良くも悪くも変化した点は少なく、依然、経営的な閉塞状態が続いています。
日立グループ離脱に際して、工機HDは上場廃止に伴う特別配当1や新ブランドの広報23などに多額の資金を投入しましたが、投入した資金を回収できるほどの売上拡大は2021年においても達成できていないと観測しており、2024年3月期限の債務返済4に向けたキャッシュフローの確保が当面の経営目標になっていると予想しています。
工機HDは2017年のKKR買収から4年目を迎えます。KKRが日立工機と同時期に買収したカルソニックカンセイ(現マレリ)は2022年の上場予定を発表し5出口戦略を明確にしましたが、工機HDに関しては資本金の減資や役員人事など組織再編を再三続けており、事業売却による企業価値の減少も含め超長期的な経営の観点で安定性に若干の不安を感じる部分もあります。
当時掲げた「2020年度を目途に売上3,000億円を目標6」が未達となった現在、現在の親会社であるKKRがどのような出口戦略を歩むのか注目されます。