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なんだかんだで色々あった2021年の電動工具市場
2021年も振り返ると色々なことがありました。電動工具市場としては、企業再編が進んだ2010年代末程の劇的な動きは無かったものの、革新的な新製品や新規参入企業の登場などが目立つ年になりました。
昨年の2020年はマキタ・HiKOKI共に既存製品の積極的な36V化が目立ちましたが、2021年の動向に関してはHiKOKIは36V化の弾切れが目立ち、マキタは40Vmaxの拡充を進め新ジャンルの製品投入を活発に行っています。
企業動向的には2010年代末の企業清算的な動きも目立ち、RYOBIブランドの終了やPanasonicの再編など、今後の展開上無視できない動きを取る企業も見られました。
この記事は、2021年に話題になった製品や企業動向などをランキング形式でまとめています。順位付けのコンセプトとしては「今後の国内電動工具産業に影響を与える」ですが、順位自体にはそこまで深い意味は込めていないので「こんな事もあったな」程度にご覧ください。
10位:ホームセンターコメリ セミプロ電動工具UBERMANNを展開
ホームセンター コメリは7月にセミプロ向けの充電式電動工具ブランド UBERMANNを立ち上げました。
ホームセンターのPB電動工具と言えば家庭向けのモデルが中心ですが、UBERMANNシリーズは共通バッテリーの18V充電式電動工具でPBながらプロ向けに近い製品群を揃えています。
マキタやHiKOKIに変わるプロ向け電動工具の新たな選択肢として、ユーザーの動向がどのように変わるか注目されます。
9位:HiKOKI コードレス冷温庫 UL18DBが発売
HiKOKIが6月に販売を開始したコードレス冷温庫UL18DBは今夏話題の製品になりました。
2部屋モードによる冷蔵・冷凍の同時使用やバッテリー充電機能搭載など、充電式冷温庫としてあれば嬉しい機能全部入りで、2020年の風雲児とも言えた マキタ 充電式保冷温庫CW180Dどころか、2021年の最新モデルCW001Gまで完膚なきまでに叩きのめした傑作機と言える製品です。
現場作業からアウトドアまで幅広い用途で使える定番製品として今尚人気の高いモデルです。
8位:マキタ 64Vmaxシリーズを展開
欧州マキタは11月にマキタの新しい充電式シリーズ 64Vmaxの展開を予告しています。
64Vmaxバッテリーは57.6V-4.0Ahのバッテリー構成で、外観形状はモビリティ用途に使われる手提げ型のバッテリーに近い形をしています。現時点では対応製品として充電式芝刈り機LM001Jが予告されています
本シリーズは、後述の80Vmaxシリーズやコネクト接続シリーズと競合するため、64Vmaxを新たに展開するマキタの意図は一切不明であり、今後の製品展開の内容に注目です。
7位:工機HDジャパン CCOにヒロミさんが就任
11月にHiKOKIはタレントのヒロミさんを販売子会社 工機ホールディングスジャパンのCCO(最高コミュニケーション責任者)に迎えました。
就任発表と同時に行われた記者会見では、特賞「TOYOTAハイエース+電動工具10点セット」で総額400万円近い太っ腹な抽選キャンペーンの実施も発表されました。
話題性だけなら、もう少し高い順位にしても良いかなとも思いましたが、記者会見の内容からCCO就任は肩書だけの広告塔であり、工機HDの将来性としては大きな影響がなさそうなのでこの順位です。
6位:パナソニック 新ブランド EXENAを展開
パナソニックは6月に新たな電動工具ブラン ドEXENA(エグゼナ)を立ち上げました。
EXENAブランド発足の背景には、パナソニック本社の企業体制改革に強い影響があると予想しており、パナソニックの電気設備品の作業工具の位置づけだった電動工具事業も、企業体制の変更に伴い競合他社の電動工具事業に匹敵する採算性の確保が優先された事情があると予想しています。
ちなみにブランド公表時点の販売目標台数は17万台を掲げており、飽和状態にある日本国内の電動工具市場としては強気な売上目標を掲げています。
5位:マキタ 充電式ケトルKT360D発売
10月にマキタが発表した新製品が充電式ケトルKT360Dです。
まさかのバッテリーで動作する湯沸かし器としてSNSを中心に話題沸騰となり、海外マキタでもSNSで販売が予告されるとコメントで埋め尽くされるほどの製品になりました。
充電式ケトル発売の3ヵ月前に 電動工具メーカーが充電式湯沸かし器や電気ケトルを販売しない理由 を書いたライターは発売後「自分はマキタを何もわかってなかった」とボヤいていたとかなんとか。
ちなみにKT360DZの発売二か月後には40Vmaxモデル KT001Gも発売しました。
4位:京セラ RYOBIブランドを廃止、Powerブランドへ移行
RYOBIの電動工具事業を買収して発足した京セラインダストリアルツールズは、10月にRYOBIブランド展開の終了を発表しました。
2017年9月の買収から約4年を経てRYOBIブランドの歴史は終わり、新たなブランドとしてPowerシリーズがスタートします。
長年親しまれていた日本発の電動工具ブランドが無くなってしまうのは寂しく思いますが、世界市場でRYOBIと言えば香港TTI社のRYOBIを指し、日本発工具ブランドとしての影響力は遥か昔に消滅しているため、世界市場に挑戦したい京セラの立場としては仕方のない選択だったのかもしれません。
3位:DeWALT 積層セルバッテリー POWERSTACKを開発
ブラシレスモーターの登場以降、電動工具産業における最大の技術革新こそDeWALTの新バッテリー POWERSTACKです。
電動工具用のバッテリーは18650と呼ばれる円筒型のバッテリーセル10本で構成するのが一般的ですが、POWERSTACKはモバイル機器に使われる積層型のラミネート型セルを電動工具として初めて採用したのが特徴です。
現時点ではコストを中心に利点の乏しいPOWERSTACKバッテリーですが、技術発展的な期待は大きく、次世代バッテリーの技術革新の方向性によっては必須の技術になり、先手を打つことは特許戦略上大きな価値があります。
ブラシレスモーターも登場当初の5~6年はインパクトドライバにしか採用できないモーターでしたが、その後のパワーデバイスの性能向上によって、今や充電式工具のスタンダードにまで成長した実例があります。積層型セルについても遅かれ早かれ同じような動向を歩むものと予想しています。
ちなみに中国の工具メーカーCHERVON社も積層セル採用の工具バッテリー開発を進めており、電動工具本場の米国勢や勢いを増す中国勢に対し、マキタ・HiKOKIの日本勢はどのように動くのか期待されます。
2位:ミルウォーキー電動工具、日本市場へ上陸
4月1日には世界的な有力電動工具ブランド ミルウォーキーが日本市場に上陸しました。
ミルウォーキーは米国ウィスコンシン州発の電動工具ブランドです。現在は香港TTI社の傘下の電動工具ブランドで、その企業規模・開発力・成長性は目を見張るものがあり、製品展開力に関しては世界トップクラスの電動工具ブランドと言えるでしょう。
日本展開については日本法人のミルウォーキーツール・ジャパン合同会社が販売を進めており、まずは日本市場へのローカライズ展開を進め、それがひと段落してシェアが拡大したら日本法人主導の製品開発も進めて行きたいとのことでした。
1位:マキタ 80Vmaxシリーズが始動
マキタは1月に40Vmaxバッテリーの拡張シリーズとなる40Vmaxバッテリーを2本装着する80Vmaxシリーズの展開をスタートしました。
80Vmaxシリーズの展開によって、高出力充電式工具の分野で先を進むDeWALT FLEXVOLTやミルウォーキー MXFuelとも対等に戦える商材を手にすることになります。企業拡大・製品展開的な成長を評価し、今後の期待も含めた点で2021年トップの1位です。
現在はハンマ・ハンマドリル・刈払機の3モデルしかありませんが、エンジン工具を置き換える新たな需要の受け皿として新市場への参入が期待されます。
海外では新製品のパワーカッターを予告しており、間違いなく開発を進めているであろうOPEユーザー熱望の80Vmaxチェーンソーの発売にも期待が高まります。