VOLTECHNO

ガジェットとモノづくりのニッチな部分を伝えるメディア

ミルウォーキーツール・ジャパンが設立、Milwaukeeブランドの日本販売も間近

ミルウォーキーツール・ジャパンが設立、Milwaukeeブランドの日本販売も間近

ミルウォーキーツール・ジャパン合同会社が設立

米国を中心に展開する工具ブランドMilwaukeeは、2020年11月から日本市場を対象にした人材採用を開始しました。

採用情報ページ内では、「日本国内におけるエンドユーザ販売や市場シェアの拡大、およびMilwaukeeブランドの成長に寄与することを目的として採用を行う」との記載もあり、Milwaukee製品が日本市場で販売されるのは確実と考えられます。

採用ページは2020年11月から公開され「プロダクトマネージャー」「セールスマネージャー」「デジタルマーケティングエグゼクティブ」「カスタマーマネージャー」「サプライチェーンスーパーバイザー」の5種の職種を募集しています。

※2021年1月時点で採用は終了しています。

2020年12月まで公開されていた採用情報と職務の解説ページ。2021年1月時点で採用は全て終了している。

採用を行っているのは、Milwaukee Tool Japan (ミルウォーキーツール・ジャパン合同会社)です。2020年4月に「テクトロニックインダストリーズジャパン合同会社」として法人登記が行われ、2020年7月に現在の社名に変更されました。

Milwaukee Tool Japanの公式Instagramアカウントも開設済み(アカウント先

電動工具だけに留まらない総合工具メーカー Milwaukee

Milwaukeeの歴史は長く、1924年にアメリカウィスコンシン州ミルウォーキーに電気ドリルのメーカーとして設立されました。

その後も電動工具を中心に製品開発を続け、2005年のリチウムイオンシリーズ展開・2016年のIoTスマート電動工具展開・2019年の建設機械シリーズMX Fuelの展開など、電動工具の枠を超えた革新的な製品を投入する企業として世界中から注目されています。

リチウムイオン電動工具は、全シリーズで約300種類と多彩なラインナップを揃え、手工具・アクセサリの取り扱いもあり、さらに新たな建築ソリューションやビジネスモデルの展開まで手掛ける総合工具メーカーとして全世界に君臨しています。このような取り組みを行っている工具ブランドはMilwaukeeを含めDeWALTとBoschの3社しかありません。

画像参考:Careers – Milwaukee Tool Japan [画像クリックで拡大]

製品展開コンセプトや広報ストーリー展開も明確に進められており、最近では最新情報の公表イベントMilwaukee Pipeline™で業界関係者を沸かしています。

M18 FUEL™シリーズ

Milwaukee主力の電動工具がM18 FUELシリーズです。

18Vのリチウムイオンバッテリーで展開される製品シリーズです。ラインナップ数は200を超え、プロ向け電動工具から園芸機器・照明に至るまで幅広い製品をカバーしています。

M12 FUEL™シリーズ

M12 FUELシリーズはMilwaukeeの10.8Vバッテリー工具シリーズです。

取り回しに優れる小さな製品を数多く展開しているのが特徴です。バッテリーをグリップ部分に収納する差し込み構造なので、グリップが太くなりがちなのが欠点です。

MX FUEL™シリーズ

2019年に展開が始まった最新の充電式建築工具が、MX FUELシリーズです。

公称72Vの専用バッテリーによる最大容量432Whの超巨大バッテリーを採用しており、ハンマやコアドリルのような高い出力を必要とする用途にもコードレスで対応できる超高出力の電動工具シリーズです。

PACKOUT™シリーズ

欧米市場で成長しているのがストレージ分野です。

日本ではワゴン車に資材を個別に積み込んで現場まで移動するスタイルが一般的ですが、海外市場ではピックアップトラックでの輸送や大きな現場で荷物や資材を持って移動することも多く、一まとめにして収納・移動できるシステムケースが人気です。

ハンドツール

アクセサリ・消耗品

ONE-KEY

Milwaukeeで最も注目を集める技術が、電動工具にIoT技術を搭載したスマート工具シリーズ「ONE-KEY」です。

2016年から展開の始まったONE-KEYですが、その後も細かいソフトアップデートや機能追加を重ねており、登場から現在に至るまで電動工具業界のスマート化を牽引する技術として常に先を進んでいます。

機能面でも国内電動工具メーカーが展開するBluetooth機能より数段上の機能を搭載しており、クラウドやBIM連携など、電動工具の新たなビジネスモデルを構築する技術として今尚発展が進んでいます。

Milwaukeeの本体は香港TTI

Milwaukeeは、香港の総合電動工具メーカーTechtronic Industries(以下 TTI)グループ内の1ブランドとして展開が行われています。

TTIは1985年に設立された香港の企業で、工具関連のメーカーとしては新興に当たる企業です。

2005年以降、MilwaukeeやRYOBI海外事業の買収により急速な拡大を続け、2019年の世界売上高は70億米ドル、従業員数は30,000人を超える企業へと拡大し、現在では工具全体の世界シェアとして世界2位のシェアを占めるまでに成長しています。

工具全体の世界市場シェアではTTIは約10%のシェアを持ち世界2位の工具メーカーに君臨している。現在も売上成長を続け事業拡大を続けている。
(出典:Stanley Black & Decker, Inc. 2019 Investor Day}

日本の工具市場でMilwaukeeに勝算はあるのか

日本のプロ向け電動工具市場は、グローバル電動工具メーカーのマキタ, HiKOKIの2大体制を筆頭に、国内メーカーのKYOCERA, Panasonic, マックスを含め5社、さらに有力海外メーカーのBOSCH, HILTIを含む計7社で市場を形成しており、ここに新たなプロ向け電動工具メーカーが入り込む余地はないと評価しています。

日本は先進国市場なので高価格・高付加価値製品は販売できるものの、日本のプロ向け工具の主要販路は、地域密着型の小規模販売店を中心に構成されており、全国区ホームセンターの販売契約で販路が構成できる欧米市場とは事情が大きく異なります。

Milwaukeeが強みとするプロ向け電動工具は、日本のプロ向け工具の主力販路そのものにすら入り込めない可能性が高いと予想されます。

さらに、日本のプロ向け電動工具市場は、住宅着工件数の減少や作業従事者の人手不足を受けて成熟期から衰退期へ差し迫っている段階であり、最近の例としてタジマ電動工具の撤退HiKOKI拡大戦略の失速がそれを象徴しています。

Milwaukeeが強みとするIoTソリューションのONE-KEYも、日本独特の規制/認証やBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及度が低いこと考慮すると、日本でIoT関連の製品展開が行われる可能性も低いでしょう。

既に日本に上陸しているStanley Black&DeckerやBOSCHの先例に学べば、海外モデルの日本ローカライズを行っても有力な販路が構築できない問題に直面すると考えられます。

現実的なラインでは、カインズ・コーナン・ジョイフル本田のような大型店舗を持つ有力ホームセンターと販売契約を交わし、工具コーナーの1区画にM12 Fuelシリーズを設置する程度に収まるのが限界と考えられます。

LinkedInに記載されている2020年12月時点のミルウォーキーツール・ジャパン合同会社の企業概要。この会社規模では、たとえホームセンターを主力販路に据えたとしても営業マンが常に巡回し拡販資材を大量に投入するマキタ・HiKOKIに勝つことは難しい

真っ当に考えれば、Milwaukee製品の日本展開が始まっても、既存のマキタ・HiKOKI 2大体制を崩すことは容易ではありません。

商材の優劣や販売価格以前に、ユーザーの買い替えの心理的負担や販路構造の問題も含むため、シェア奪還を主軸に置いた戦略で日本展開を行えば、まず失敗することになるでしょう。

Milwaukeeが持てる全ての商材を用いて、TTIの資本力を持て余すことなく投入する事態になれば既存メーカーにとっての脅威にもなりますが、日本の工具市場の背景を考えると例え世界2位のシェアを占める電動工具メーカーと言えども採算の見通しはあまりにも悪く、今回のMilwaukeeブランドの日本展開はハイリスクローリターンな戦略と評価せざると得ません。

ただし、そこは急成長を続ける世界2位のTTIです。

もしMilwaukeeが単なる日本展開ではなく、日本市場のトップシェアを狙うことを第一目標とするならば、採算度外視でONE-KEY・MX Fuel・PACKOUTなど、日本の電動工具メーカーが持たない製品を軸に添えた長期的視野による日本展開が進み、競合他社の買収などを含む強権的な手段によって、日本の電動工具市場の構造自体を大きく変えるゲームチェンジャーになるかもしれません。

Milwaukee Japanの会社情報ページではMX/M18/M12の3シリーズの製品紹介が行われている。もしこの3シリーズ全ての展開が日本で行われるのであれば、従来メーカーにとっては脅威となる。

関連記事

Return Top