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【回路修理記2】バッテリー寿命のBluetoothイヤホン、バッテリーを交換して再生する

【回路修理記2】バッテリー寿命のBluetoothイヤホン、バッテリーを交換して再生する

筆者は普段、SONYのBluetoothレシーバー「DRC-BTC40」を使用している。2013年に発売されたこの製品を長らく愛用していたのだが、5年も使っているとバッテリーがヘタってしまい、満充電にしても10分と持たずシャットダウンするようになってしまった。

スマホ等であれば、バッテリーのヘタり時がスペック的な買い替え時になるが、Bluetoothレシーバーがこの5年で向上した機能といえばノイズキャンセリングが搭載されたくらいである。このまま買い替えるよりも、一度分解して、直せるなら直して、無理そうなら諦めて買い替えようという事を考えていた。

現象|バッテリーの劣化による電源遮断

今回の故障現象は、充電してもすぐに電源が切れてしまうという現象だ。電源が切れてしまうと言っても、急にプツっと切れるわけではなく、電池残量が少ないことを検知してシャットダウンしているため、単純に内蔵リチウムイオンバッテリーが寿命になってしまったものと考えられる。

DRC-BTC40は購入してから約5年経過している。リチウムイオンバッテリーの一般的な寿命は約500サイクル、サイクル以外にも経年でも劣化していくので、5年間使えたのであれば十分持った方だ。

レシーバーを分解、蓋を開けるまでが一苦労

バッテリーの交換を試みる前に、分解再組立てできる構造になっているかを確認する必要がある。

小さい製品の場合、ねじが使われていることは少なく、ほとんどの場合プラスチック爪での固定が多い。場合によっては接着剤や溶着によって封されていることもあり、爪や接着では分解時に破損させてしまうため、再組立ては不可能となる。

この DRC-BTC40はと言うと、側面の充電MicroUSB端子に小さいネジがあったため「ネジ止めかな?」とも考えたのだが、ネジを外しただけでは分解することができなかった。これはネジ以外にも封している方法があるという事だ。

考えること数十分「そもそも、爪や接着であればネジは不要のはず。ネジはスライドを固定するものだろう」と考え、操作パネル部分を指で横にずらすとパネルが外れてやっと内部基板と対面することができた。

結果的には、 DRC-BTC40 はねじ止め+プラスチック爪(スライド)という構造になっていて、分解自体は容易で、簡単に再組立てもできる構造になっていた。修理をするための前提として再組立については問題なさそうだ。

さらに分解を進めていく

次は、電池の形状を確認するために、ケースから基板を取り外さなくてはならない。

基板には、「NFC」「バッテリー」「イヤホン出力」の計3種類7本のリード線がはんだ付けされていた。リード線はそのままで基板を外すことができそうだが、万が一にもリード線が断線してしまった場合、パターンごと剥がれたりリード線の長さが足りなくなくなってしまったりと、別のトラブルの原因になるので、あらかじめ外して置くのが無難だ。

リード線を全部外して基板を持ち上げると、やっと目的のリチウムイオンバッテリーと対面することができた。

バッテリーの調達、データシートの確認も念入りに

DRC-BTC40 のバッテリーは容量175mAhの約40mm×15mmサイズの積層型リチウムイオンバッテリーだった。

バッテリーのラベルには品名が記載されており、名前で検索すれば同じバッテリーが調達できるだろう、とも考えていたのだが、このバッテリーは市場に流通していないようで、入手することができなかった。そのため、サイズが近いバッテリーを調達しなければならなくなった。

通販サイトをいくつか探したところ、マルツで取り扱っている容量が110mAhのDTP401525というバッテリーが使えそうなので購入してみることにした。容量は元のバッテリーから65mAh減ってしまっているが、このバッテリー以外にサイズの条件を満たせるものもなかったため選択の余地はなかった。

純正以外のリチウムイオンバッテリーを使用する場合は、製品とバッテリーの最大充電電流を念入りに確認しなくてはならない。万が一にでもバッテリーのデータシートを超えた使い方をしてしまうと、発火や火傷の原因となってしまう。

DRC-BTC40に搭載していたバッテリーは175mAhで仕様上の充電時間は2.5時間となっているため、充電電流は70mAと推測される。DTP401525のデータシート上の最大充電電流は1C(110mA)となっているため、バッテリーのスペック上は問題ないと推測される。だが、単純に充電時間と電池容量を割った電流値になるとも限らないため、本来なら充電電流を確認するのが望ましい。

また、DTP401525 には保護回路が搭載されているため、データシートを読んで保護回路自体の最大電流や保護動作時の挙動を確認して置いた方が良いだろう

念のため、新しいバッテリーを組み込む前には、裸基板のまま充電や本体動作の確認も行っておこう。今回の場合はバッテリーの保護回路を残しているため、想定外の遮断を行う可能性もある。

バッテリーの組み込みと再組立

バッテリーで動作することも確認できたため、新しいバッテリーを組み込んで再組立すれば修理は完了だ。

新しく組み込むバッテリーは長さが短いため、内部で動いてしまう可能性がある。そのため、両面テープで貼り付けてから、上から基板とバッテリーを分けるセパレーターを乗せて固定する。

セパレーターには配線に沿った溝があるため、基板を固定する前にこの溝にリード線を這わせておく。

リード線の固定が完了したら、上に基板を乗せてはんだ付けしよう。

最後に蓋を戻してねじを締めて、DRC-BTC40バッテリー交換の修理は完了だ。

まとめ|バッテリー製品の修理は分解とバッテリーの調達が肝

今回のバッテリー交換では、純正のバッテリーに交換することは叶わなかったが、類似サイズのバッテリーが調達できたため、何とか使えるようにはなった。交換してからまだ数日しか経っていないので、まだ様子見の段階ではあるが、連続使用時間や動作に問題はなく今のところは快適に使用できている。

少し不安なのが、バッテリーの充電電流についてだ。電池容量を充電時間で割れば平均充電電流は算出できるが、リチウムイオンバッテリーの充電方式がCCCV方式の場合、最大充電電流は計算より少し高く設定されていると考えられる。

このことに気づいたのは組立後だ。早いうちに再度分解して充電電流を測定しなければならない。充電電流がDTP401525の最大値を超えていた場合は、保護回路を外して電池を増やし並列構成にするなどして対応が必要になる。

最近のリチウムイオンバッテリー製品は、小型化とデザイン性を両立させるため、バッテリーは交換できないように作られているのがほとんどだ。モバイルガジェットの寿命は、間違いなくバッテリーに左右されていると言っても良いだろう。 新機能や新しいデザインの新製品に買い替えるのも良いが、まだ使えるもの、気に入ったものはできる限り長く使っていきたいものだ。

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