本記事は工機ホールディングス株式会社及び関連会社が保有する産業財産権の情報を解説・紹介するものであり、新製品発売や経営動向を保証するものではありません。工機ホールディングス株式会社及びHiKOKI(ハイコーキ)取扱店へのお問い合わせはお控えください。
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目次
HiKOKIの特許を紹介
前回のマキタの特許特集に続き、今回はHiKOKI(旧 日立工機)が出願した特許について紹介しよう。
HiKOKIの特許は実用的・機能的に性能を向上させる特許についての出願内容が多く、マキタと比べると新分野参入を感じさせる特許は少ない印象がある。
2016年から2017年の間にかけては、現在のマルチボルトの原案を思わせるバッテリーに関する様々な特許が出願されている。これらの特許は防衛出願として、類似品の発生を阻止する役割に変わっているため、これらの特許が実用化される可能性は低いと予想される。
前回のマキタ特許特集と同様、本記事も工機HDが出願した特許を紹介する記事であり、実際の特許内容や製品展開について内容を保証する点がないのをご了承ください。また、本記事による工機HD株式会社へのお問い合わせもお控え下さい。
ターミナルでモーター配線を切替、AC共用コードレス電動工具
マルチボルトの出願と近い時期に出願された特許が、AC電源とバッテリーを共用で動作できるようにする電動工具です。
この特許は、構造としてはコードレス工具になっていますが、コンセントが付いたバッテリーアダプタを接続するだけでAC電源での動作にも対応できる特許になっています。
電動工具の電圧が異なるときに、最も問題となるのが電圧によるモーター特性の変化です。この特許では、モーターの配線をバッテリーターミナルまで持ってきて、AC電源時ではコイルが直列配線となるY結線、バッテリー時にはΔ結線となるように配線を変更しています。電圧が変わってもモーター特性が同じになるような構造にしています。
モーター単体で見れば電圧の違いによる特性の違いをカバーできていますが、実際に製品化する場合ではモーターからターミナルまでの配線設計と組立の問題、モーターを駆動させるインバーター回路をバッテリー電圧からAC電圧まで幅広いレンジで対応させなければならない点など、実用化には若干難しい点も多かった特許と考えられます。
アダプタなしでAC電源に対応する構造は魅力ですが、バッテリーの互換性が無くなってしまう点や、現在のHiKOKI製品ラインナップに、AC電源をマルチボルト製品で使えるようにするACアダプタET36Aが販売されていることもあり、この構造を搭載した製品は展開されないものと考えられます。
【公開番号】特開2019-047605
36Vと108Vで切り替え、業界最高の超高圧バッテリー
電動工具をAC電源とバッテリー電源の両方の対応を実現する特許です。
先ほどの特許では、モーター配線を変えて高電圧化に対応していました。この特許ではバッテリーの電圧を切り替えられる構造にして、バッテリー電圧をAC電源と同じ電圧にしてしまおうという特許です。考え方としては現在のマルチボルトに近い構造となっています。
特許に書かれている図面では、14500セルのリチウムイオンバッテリーを30本使用して、36Vと108Vを切り替えられるバッテリーとして考案されていました。ターミナル形状も大きく変わり、切り替え構造を持たせるだけで12個もの端子が搭載されています。
これらの特許を見ると、当時の日立工機では、上記2例と現在のマルチボルトの特許も合わせて様々な視点から新たな電動工具シリーズの開発を進めていたのかもしれません。これら2つの特許がコンセプトとしていた、最終的にAC電源でも使用できる電動工具のアイデアは、AC/DCアダプタ ET36Aで実現される形となりました。
【公開番号】再表2018/079724
電動工具メーカーとしては初?ロボット芝刈り機
最後に紹介するのはバッテリーに関する特許ではなく、HiKOKIが開発を進めていると考えられる新ジャンルの製品「ロボット芝刈り機」です。
ロボット芝刈り機とは、ルンバのようなロボット掃除機と同じように、自動で広いエリアの芝を刈り取ってくれる芝刈り機です。日本では馴染みがありませんが、欧州などでは広く使われている園芸機器のようです。代表的な製品では、園芸機器メーカーのHusqvarnaが販売するAutomower(オートモア)が有名で、国内メーカーでも本田技研工業(ホンダ)がMiimo(ミーモ)を販売しています。
特許の内容自体は、芝刈りを均等に行うための動作的な制御に関する出願ですが、電動工具メーカーが販売するロボット芝刈り機となれば大きな話題になりそうです。
【公開番号】 特開2018-164425