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2021年9月25日

インパクトレンチとは

インパクトレンチとは

インパクトレンチとは、六角ボルトの締結・緩めに使用する工具です。打撃機構によって非常に高い締付トルクを実現しており、建築物へのボルト締結や、自動車のタイヤ交換などに使用します。ソケットレンチを付け替えることによって対応ボルトサイズも変更できて、強力な締付力を必要とする現場で使われています。

インパクトレンチとは「六角ボルトを締結する工具」

HIKOKI WR36DA インパクトレンチ

インパクトレンチとは、六角ボルトの締結作業に使われる電動工具です。

六角ボルトによる締結作業は建築に関わる様々なところで使われていて、鉄骨継手の組み立て・配管支持ボルト固定・搬送設備の組立・足場組立など建築の重要な部分に用いられる工具です。さらに自動車のメンテナンスや重機農機のメンテナンスなど、整備用途でも活躍しています。

構造的にはインパクトドライバと同じ製品ですが、より耐久性が高く、先端工具の脱落も発生しにくい角ドライブソケットになっているのが特徴です。

インパクトレンチは「ボルト締結」に最適化された工具

インパクトレンチは、六角ボルトの締結作業に最適化されている工具です。この点が類似している工具のインパクトドライバーと大きく異なります。

締結作業を行える工具には、インパクトドライバーやドライバドリルなど様々な種類がありますが、インパクトレンチは高い締付トルクを備えているのが特徴で、太径で厚みのあるボルトナット締結作業を高い締付力で素早く締結することができます。

六角ボルト形状の太い木ネジ「コーチボルト(ラグスクリュー)」や「スクリューワッシャー(皿座金)」のような太径の木ネジを使用する金物もあり、木造建築でもインパクトレンチを使用するケースが増えています。

1,000N・m近い締付トルクのインパクトレンチを使用すれば、300N・mのインパクトレンチより素早い締結ができるようになるのでしょうか。

トルクの高い製品を使ったからと言って、締付速度が劇的に速くなることはありません。

金属のボルト締結と木ネジの締結は、ねじの締め込みに必要とする力の加わり方が若干異なります。

インパクトレンチの締付性能を表す「最大締付トルク」は、あくまでもボルト締結時の締付トルクを表記した数値なので、木ネジの締結速度にそのまま置き換えることができない点に注意が必要です。

最大締付トルクとは

ねじを回して締め付けるときの回転方向に回す力を表した数値。ねじを締め付ける時の軸力を管理する方法として「締付トルク法」として活用される。

耐久性とランニングコストで勝るインパクトレンチ

インパクトレンチと同じ工具にはインパクトドライバもあり、M16程度のボルトまでならソケットビットを装着することでインパクトレンチと同じ作業を行うことができます。

生産工場や建設現場などでは、細いボルトの締結作業であってもインパクトレンチが使用されています。高い汎用性を持つインパクトドライバを使用せず、インパクトレンチを使用する理由には、安全性やコスト的な理由があります。

ソケットはソケットビットよりも低価格です。ソケットビットは耐久性もそれなりで、高い締結トルクを必要とするボルト固定ではあまり寿命が長くなりません。特に、インパクトドライバで使うソケットビットはボルトが太径になるほど高価になるため、太径ボルト締め付けではインパクトレンチのほうがランニングコストが低くなります。

ソケットビットは六角ビットとソケットの接合部が破断した時に大きなソケット片が落下しやすいため、高所作業の多い建築現場などでは、安全性の観点から落下物を避けるためにインパクトレンチを使用する場合もあります。

タイヤ交換でインパクトレンチを使う時の注意点

インパクトレンチは車の整備にも使用する工具ですが、タイヤ交換の時にはいくつか注意しなければならない点があります。

●締め付けすぎない
 インパクトレンチは非常に締付トルクの高い工具なので、指先の操作一つでボルトが破損するまで締め付けてしまいます。タイヤを固定する規定トルクは、普通車なら90~110N・m、軽自動車なら70~90N・m程度なので、最大締付トルクの高いインパクトレンチを使用する場合には注意が必要です。

●トルク調整を行わない
 インパクトレンチは締結のみを行う工具なので、トルク調整はできません。最大締付トルク100N・mのインパクトレンチを使っていても、ボルトの汚れや摩耗によって締付トルクは大きく変わってしまうため、本締めには必ずトルクレンチを使用します

●ナットが緩まない場合もある
 普通車のタイヤ固定に使われているボルトの締結トルクは100N・m前後なので、原理的にはそれより高いトルクのインパクトレンチを使用すればナットを外すことができますが、実際にはナットの汚れや固着・錆によってインパクトレンチでは緩まない場合があります。このような場合には、ソケットレンチなどで緩めてからインパクトレンチを使用します。

インパクトレンチの選び方

インパクトレンチには様々な種類があり、使用する用途によって電源やソケット径・締付トルクなどから必要なインパクトレンチを選定します。

電源方式

●AC電源方式
 コンセントから電源をとる方式です。バッテリー方式よりも価格が安く、バッテリー電圧降下による締付トルクの低下も無いため安定した締結作業が可能です。AC100V電源のほか、200Vを使用する製品も販売されています。

●バッテリー方式
 現在主流の方式で、充電式バッテリーを使用したコードレスモデルです。重量はバッテリー分重くなりますが、上下にウェイトがあるためバランスに優れ、見た目より使いやすいのが特徴です。

●エア方式
 コンプレッサによる圧縮空気で動作する方式です。エア方式はモーターのインパクトレンチが動作原理が異なり、動力も内蔵していないため、非常にコンパクトで高トルクです。エア配管が常備されている整備工場や工場ラインなどで使用されます。

対応ソケット径

インパクトレンチに装着するソケット径には6.3sqから25.4sqまでの5サイズがあり、それぞれサイズや対象ボルトが異なります。

最も普及しているのが12.7sqサイズで、広いサイズのボルトに対応していることから、建設現場から車の整備まで幅広く対応しています。

ミリインチ日本呼び対象ボルト
6.35sq6.35mm1/4″2分M5~M10
9.5sq9.5mm3/8″3分M5~M14
12.7sq12.7mm1/2″4分M6~M22
19.0sq19.0mm3/4″6分M10~M30
25.4sq25.4mm1″8分M22~M30
ソケットレンチとインパクトレンチのソケット

手締めのソケットレンチとインパクトレンチのソケットは同じ取り付け構造ですが、それぞれ専用のソケットを使用します。ソケットレンチ用のソケットをインパクトレンチに使用すると、破断や表面処理の劣化の原因となります

最大締付トルク

インパクトレンチの性能を表す数値です。この数値が大きくなるほど締め付ける力が高くなりますが、その分本体サイズも大型化するため、最適な締付トルクの製品を選定するのがおすすめです。

締付トルクは、測定に使用しているボルトが太いほど大きくなる傾向があるため、最大締付トルクを比較する場合には、締付トルクの数値がどのサイズのボルトを使用した数値なのか確認した方が良いでしょう。

インパクトレンチ おすすめ製品

タイヤ交換にオススメ「HiKOKI FWR14DGL」

最大締付トルク
(測定ボルト)
160N・m
(M16 F10T)
最大締付能力普通ボルト:M6~M16
高力ボルト:M6~M12
先端サイズ12.7sq
回転数0~2,600min-1
打撃数0~3,200min-1
電圧14.4V
重量1.3kg
発売年2015年

家庭のタイヤ交換に特化したインパクトレンチがHiKOKi FWR14DGLです。

非常に低価格なインパクトレンチで、幅19・21mmの薄口ロングソケットが付属しているタイヤ交換仕様になっています。

プロ向けモデルと共通の14.4Vバッテリーモデルなので、HiKOKI工具入門機としてもおすすめ。簡単な整備作業にも活躍できるホーム用インパクトレンチの決定版とも言える1台です。

軽量スリムな18Vインパクトレンチ「マキタTW181D」

最大締付トルク
(測定ボルト)
180N・m
(M16 F10T)
最大締付能力普通ボルト:M8~M16
高力ボルト:M6~M12
先端サイズ12.7sq
回転数0~2,400min-1
打撃数0~3,600min-1
電圧18V
重量1.4kg
発売年2019年

マキタの最新小型インパクトレンチがTW181Dです。

18Vバッテリー込みの重量でも1.4kgと非常に軽量モデルになっているのが特徴で、最大締付トルクも180N・mと十分な作業量を持っているのが特徴です。

取り回しに優れているため、ケーブルラックや足場組立などナット締結を多用する現場におすすめです。マキタ独自の逆転オートストップモードも搭載。

木工モードでコーチボルトに最適「HiKOKI WR36DC」

最大締付トルク
(測定ボルト)
300N・m
(M20 F10T)
最大締付能力普通ボルト:M10~M20
高力ボルト:M10~M16
先端サイズ12.7sq
回転数0~3,000min-1
打撃数0~4,000min-1
電圧18V
重量1.9kg
発売年2018年

インパクトレンチでありながら、コーチボルトの締結用の「木工モード」を搭載した製品がWR36DCです

同クラスAC100Vのインパクトレンチよりも素早い締付時間を実現していて、コードレスによる取り回しの良さと性能の高さを両立した大工用途の新定番モデルです。

マキタ最新の300N・mモデル「マキタ TW300D」

最大締付トルク
(測定ボルト)
300N・m
(M16 F10T)
最大締付能力普通ボルト:M10~M20
高力ボルト:M10~M16
先端サイズ12.7sq
回転数0~3,200min-1
打撃数0~4,000min-1
電圧18V
重量1.8kg
発売年2019年

マキタ最新モデルのインパクトレンチがTW300Dです

同クラス製品の中でも軽量・コンパクトが特徴で、最大締付けトルク300N・mの性能を搭載しています。

マキタ独自の様々な動作モードを備え、緩み時のナット落下を防ぐオートストップモードや、連続作業を快適に行えるスイッチ全速モードなど、作業的な使いやすさを重視したモデルです。

マキタの大型800N・mインパクトレンチ「マキタ TW1001D」

最大締付トルク
(測定ボルト)
800N・m
(M24 F10T)
最大締付能力普通ボルト:M12~M30
高力ボルト:M10~M22
先端サイズ19sq
回転数0~1,800min-1
打撃数0~2,200min-1
電圧18V
重量3.7kg
発売年2015年

マキタ最大の充電式インパクトレンチがTW1001Dです。

3段階の打撃力切り替えに、2灯式のLEDライトを備えており、使い勝手に優れたインパクトレンチとして様々な現場で活躍します。

コードレスでトップクラスの締付トルク「HiKOKI WR36DA」

最大締付トルク
(測定ボルト)
1,100N・m
(M30 F10T)
最大締付能力普通ボルト:M12~M30
高力ボルト:M10~M24
先端サイズ19sq
回転数0~1,500min-1
打撃数0~2,900min-1
電圧36V
重量3.7kg
発売年2017年

コードレスモデルのインパクトレンチで、1,100N・mもの非常に高い締付トルク性能を搭載しているのがWR36DAです。

バッテリー搭載製品でありながら、36Vバッテリー搭載によってAC100Vモデルよりパワーがありながら、軽いボディの重量3.7kgを実現しています。

TONEからは赤ボディ仕様 CIW61100も販売しています。WR36DAと同じ本体仕様ですが、大容量バッテリーのBSL36B18が付属しているのが特徴です。

ACブラシレスの頼れる現場レンチ「HiKOKI WR22SE」

最大締付トルク
(測定ボルト)
620N・m
(M22 F10T)
最大締付能力普通ボルト:M14~M24
高力ボルト:M16~M22
先端サイズ19sq
回転数1,400min-1
打撃数2,000min-1
電圧100V
200V
重量4.6kg
発売年2015年

日立工機の時代から誇るACブラシレスモーター搭載機種がWR22SEです。

AC電源の電動工具でありながらブラシレスモーターを搭載しており、モーターのトラブルが減りメンテナンスフリーを実現しています。

高度な高効率インバータ回路により、継ぎコードでもトルク減少が少なく、エンジン発電機でも使用できるのが大きなメリットです。

スペック上は最新モデルのコードレスインパクトレンチWR36DAに見劣りこそしますが、安定した作業性を備えた低価格なモデルとして、まだまだ現役で活躍できるモデルです。

この記事で紹介した工具

インパクトレンチで使えるアクセサリ

※12.7sqソケット用

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