DIYや日曜大工の主役と言えば木材です。木材はその加工性の高さから様々な用途に使われます。木工作業は手工具でも可能ですが、高い技術力や膨大な時間が必要になってしまいます。そのため、木工作業の効率化には専用工具が欠かせません。
木材を切断する道具には、その作業に合わせた様々な専用工具があります。今回から有名なものからマイナーな道具まで木工電動工具を紹介していきたいと思います。
目次
丸のことは木材を切断する電動工具
丸のことは、丸いノコ刃を回転させて木材の切断を行う電動工具です。丸のこを使うと手工具のノコギリとは比較にならないほど早く正確な切断作業ができるようになります。
丸のこの切断能力は基本的に丸のこ刃の大きさによって決まります。大きいのこ刃を使うほど大きな材料を切断することができますが、その分取り扱いは難しくなります。
木工作業の効率を劇的に上げる工具ではありますが、刃物が高速回転する回転工具の一種であるため、一つ間違えると大けがに直結する工具でもあります。
安全カバーや二重スイッチ(一部製品)の安全構造も搭載されていますが、作業効率を考える以上に、操作を正確に行うことを第一に考えて使用するようにしましょう。
のこ刃は超硬チップを取り付けた木工用チップソーが主流ですが、それ以外にも、サイディングの切断や石膏ボード(ブラスターボード)切断、塩ビ切断用ののこ刃があり、さまざまな材料を切断することができます。
丸のこでできること・搭載する機能
直線切断
丸のこは直線の切断作業を最も得意としています。というよりも刃物の形状からして直線切断しかできません。
直線切断は、丸のこガイドやTスライドを使用することでさらに高い精度での切断が可能です。
深さ調整
丸のこはベースを動かすことで、のこ刃の深さを調節することができます。
切り込み深さを調節することで、手工具のノコギリでは難しい欠き込み作業などを行うことができます。
集じん
切断する際にはどうしても切断屑が大量に発生してしまいますが、集じんアダプタを取り付けることで木くずを効率的に集じんすることができます。
これは他の木工工具にはない特徴で、作業後の片づけの手間が減るので、全体的な作業効率を上げることができます。
45°傾斜切断
丸のこの最も代表的な機能が45°傾斜切断です。
丸のこの本体とベースの接続部分は、傾きが調節できるようになっており、材料に対して90°から45°までの範囲までで傾斜切断させることができます。
精度の高い傾斜切断が可能なので、板材の留め接ぎ作業なども行うことができます。
深切
深切とは通常の丸のこよりも深く切断することのできる機能の事をいます。
通常の丸のこよりものこ刃が深く入るように設計されており、深切丸のこであれば同じサイズのチップソーであっても大きい材料を切断させることができます。
その分、のこ刃を固定するフランジの径が小さく、のこ刃ががたつきやすいという欠点があります。また本体内部の歯車も小さくなっているため耐久力も若干劣るようです。(気にしたことはありませんが…)
電子制御
電子制御とは定回転制御やソフトスタートの入った丸のこの事を指します。
定回転制御とは負荷がかかっても同じ回転数を保とうとする働きの事です、大きいモーターでなくても負荷に対して一定の回転数を保つことができるようになったため、モーター部分が小さいという特徴があります。
また、過負荷に対しては保護停止するようになっているので、モーター焼けを未然に防ぐようになっています。(もちろん限度はありますが)
ブラシレスモータ
プロ用丸のこで採用されているのがブラシレスモーターです。ブラシレスモータは延長コードなどによる電圧降下に強く、本体重量が軽いという特徴を持っています。
ブラシレスモータを採用したコードレス丸のこでは、バッテリーの持ちがかなり良くなっているため、1充電で多くの作業を行うことができます。
逆勝手丸のこ
丸のこは通常、持つ手の右側にのこ刃が来るように作られています。これは右手に持つことを前提に作られている構造です。
左手で使うように作られた丸のこを逆勝手丸のこと言います。逆勝手丸のこは持つ手の左側にのこ刃が来るようになっています。
丸のこのバリエーション
造作丸のこ
日立工機 深切り電子造作丸のこ 刃径165mm 逆5゜傾斜切断機構 切込み深さ調整機構 LEDライト付 のこ刃別売り 本体のみ C6UEY(N)
造作丸のこは精度の高い切断が必要な場合に使われます。造作の読み方は「ぞうさ」や「ぞうさく」と呼ばれたりします。
通所の丸のこよりもベースの精度が高く、付属のアングルも高級なものになっているため、通常の丸のこよりも高い精度の切断が可能になっています。
仕上げ材や取り付け材など、目に見える部分に使われる合わせ作業などに使われます。
しかし、実際のところは、通常の丸のこでも高精度のアルミベースが主流となっているため、そこまで精度の差はないようです。
防じん丸のこ(集じん丸のこ)
マキタ(makita) 125mm防じんマルノコ ダストボックス仕様 チップソー付 KS5100F
集じんボックスや集じんアダプタが付いた丸のこを防じん丸のこ(集じん丸のこ)と言います。
通常の丸のこは集じんアダプタがなければ集じん機を接続することができませんが、集じん丸のこの場合は集じんボックスが付属しているため、集じん機を接続しなくてもある集じんが可能です。また、外観からわかるように直接集じん機を接続することが可能です。
防じん丸のこには集じん機を接続して使うものと、ダストボックス内に貯めるものの二種類があります
このタイプの丸のこは、集じん性能の高さを生かして、内装工事や石膏ボード・サイディングの切断作業などに使われます。
卓上丸のこ
日立工機 卓上丸のこ のこ刃径190mm 両傾斜45゜ レーザーマーカー付 スーパーチップソー、LEDライト付 C7FCH
固定された丸のこを上から降ろして切断(ダウンカット)する丸のこを卓上丸のこと言います。
丸のこがアームによって固定されているため、手ぶれの影響を受けずに狙ったところを確実に切断することができます。そのため、卓上丸のこは全ての丸のこの中で最も切断精度が高く、傾斜切断なども行えるため、高い精度が必要な合わせ作業などで使われます。
一方、据置型の工具のため取り回しが悪く、長尺材の切断には広いスペースを必要とします。また、切断能力は通常の丸のこより大きく制限されているため、用途に合わせてサイズを吟味する必要があり、汎用的な切断には向きません。
卓上丸のこは基本的にコンセントで動く工具ですが、最近、マキタからコードレス卓上丸のこLS600DRG・RYOBIからコードレス卓上丸のこBTS-180L5が販売されました。
卓上スライド丸のこ
卓上丸のこにスライドパイプを追加して、卓上丸のこの切断能力を大幅に向上させたものが卓上スライド丸のこです。切断方法は卓上丸と同じ方式のダウンカットと、のこ刃をスライドさせて切断するスライドカットの二種類の切断方法に対応しています。
大きい材料の高精度な傾斜切断や、溝を掘る作業(雇い実継ぎ)など内装材の高精度な切断作業を行うことができます。高い切断精度に加えて、ある程度の大きさの材料までなら汎用的に切断できることから、木工作業をメインに行うDIYでは憧れともいえる電動工具です。
切断能力は卓上丸のこより向上していますが、スライド機構のため精度は若干落ちる傾向にあるようです(特に傾斜スライドカット時など)。
卓上スライド丸のこは日立工機のものが精度・精度共に評判が良く、木工切断工具の最高モデルとも言えます。
テーブルソー(ベンチ丸のこ)
フローリング材を縦に切断する時や、木材を長く切りたいときに便利なのがベンチ丸のこです。一般的に業務用の大きいものをテーブルソーと呼びます(メーカーによってはベンチ丸のことも呼ばれます)。
通常の丸のこでも、丸のこスタンドを使えばテーブルソーのように使用することが可能です。
テーブルソーは長材を切るのに適していますが、刃が上向きになっており、切断時は刃がむき出しになるため、取り扱いには注意が必要です。
チップソーカッター
本来は鉄工用の切断工具ですが、木工用チップソーを取り付ければ木の切断も可能です。
しかし、チップソーカッターは耐久性を持たせるために鉄板ベースが使われており、切断精度は高くありません。また、45度傾斜などもないため機能面では通常の丸のこよりだいぶ劣ります。回転数も丸のこより遅いため、切断面も若干荒くなります。
コード式?コードレス?どちらの丸のこがおすすめ
マキタ HS471DRG 充電式マルノコ 18V 6.0Ah 青
木材の切断には高出力モーターが必要なので、基本的にはコード式の丸のこが主流となっています。
コード式の丸のこであれば安定した切断作業を長期間行うこともでき、回転数も落ちないため効率的な切断作業を行うことができます。ですが、電源が必要で、コードもぶらぶらしてしまうので取り回し面では若干使いづらさがあります。
一方、コードレス式の丸のこはバッテリーの持ちやモータ出力の問題で125mmの小型のものが主流で、1充電あたりの作業量も多くはありませんでしたが、ブラシレスモータの登場によってコードレス丸のこのデメリットはだいたい解決しました。現在では165mmの丸のこでも十分な作業量を持っています。
コードがなく取り回しに優れるコードレス丸のこですが、効率よく作業を行うには自分の作業環境との検討が必要になります。例えば1充電あたりの作業量、実作業でどれくらい切断を行うか、手持ちのバッテリーで他のコードレス工具をバッテリー切れさせることなく作業できるか、などを十分に考慮しましょう。
コスト面から考えると本体価格が安価で切断能力にも優れるので、一般的にはコード式の丸のこのほうがおすすめです。ですが、電源がない作業場であるとか、既にバッテリーを持っている場合などであれば、コードレス丸のこを購入する余地も十分にあります。
おススメの電動丸のこは?
DIY向け
初めて丸のこを買う方であれば、日立工機のコード式丸のこFC6MA3がおすすめです。
のこ刃はほとんどの木材が切断できる165mmに対応しており、精度の高いアルミベース、平行度微調整や1050Wの高出力モーターを搭載しており、プロ用途でも十分使える性能を搭載しています。これを一台用意すれば、木工切断で困ることはないでしょう。
プロ向け
プロ向けモデルは各社様々な丸のこを販売していますが、各社十分な性能・機能を搭載していて、イチオシ!と言えるような製品はありません。
というのも、プロ用モデルで決め手となるのは細かい機能の違いや、フィーリングだったりするからです。
丸のこでやってはいけないこと
丸のこは電動工具の中でもかなりデリケートな工具です。危険な工具というイメージもありますが、丸のこは精度が必要になるため落下や衝撃に弱く、少し荒く使うだけで精度が狂ってしまう事もあります。
また、丸のこ使用時に最も危険なのはキックバックという現象です。これは、のこ刃が回転中に何らかの原因で噛んでしまう事で、その反発力で丸のこが飛んでくる現象をいいます。
落下・衝撃などを加える
ベースなどは下手に力を加えると、歪んでしまい切断精度が悪くなってしまいます。また、アルミベースなどは衝撃に弱く、落下や衝撃などで割れてしまう事などがあります。
ベースの破損ならまだ修理可能ですが、ベースと本体のアーム部分が割れてしまうと買い替えになってしまいますので取り扱いには十分注意してください。
必要以上にのこ刃を出さない。
案外無頓着になりがちなのがのこ刃の調整です。切断材料の厚さに対して、のこ刃を出し過ぎると、キックバックが発生しやすくなってしまいます。
のこ刃の出す量は切断木材の5mm~10mmほどが望ましく、それ以上出したりするとノックバックの危険性が高まるので注意しましょう。
のこ刃を回転させてから切断を始める。
これもキックバックの原因となる使い方です。
無負荷で動作させて、最高回転数に達してから木材を切断するようにしましょう。
丸太の切断
丸のこは加工を前提とした木材を切断する工具です。
丸太や薪など、皮がついていたり節の多い材料を切断するとキックバックや破損の原因になるので、絶対に使用しないようにしてください。
釘・ネジが撃ち込まれた木材の切断
DIYや解体作業でやりがちなのが、釘やネジが撃ち込まれた木材に対して丸のこを使ってしまう事です。
木工用チップソーは金属の切断に対応していません。切断中、急に釘やネジなどの硬い材料に触れると、キックバックの原因になったりします。
解体作業などは、安全のためにセーバソーなど往復運動系の工具を使うようにしましょう
安全カバーの取り外し・固定
熟練者に多いのが安全カバーの取り外しや固定です。
安全カバーを取り外せば作業はしやすくなります、作業の幅も広がるでしょう。ですが、ほんのちょっとの作業効率を求めたばかりに、取り返しのつかない大けがにつながる可能性があります。絶対に安全カバーを取り外してはいけません。
どんなのこ刃がおすすめ?
ホームセンターなどに行くと様々な種類ののこ刃が売られています。
現在、のこ刃の主流は、台金に超硬チップを取り付けたチップソーです。チップソーであればタテ挽き・ヨコ挽き・硬木・合板などほぼ全ての木材を切断することができ、耐久性も通常ののこ刃より高くなっているため一般的に使われています。安いものでもいいのでまずは木工用チップソーを購入するようにしましょう。
木工用チップソーの中でも特におすすめなのがコーティングされたチップソーです。
木材を切断するとヤニや合板の接着剤などでチップソーが汚れてしまい、切断荷重が重くなったり、引っかかったりして切断精度が落ちてしまいます。ですが、フッ素などでコーティングされたチップソーであれば、異物の付着を防ぐことができ、長い期間快適な切断作業を行うことができます。
コーティングチップソーにも様々なものがありますが、おススメなのはマキタのプレミアムタフコートチップソーです、これはコーティングが長く続き切断能力も殆ど落ちないと評判です。通常のチップソーを使っている方はぜひ一度使ってみてはいかがでしょうか。
最近では鮫肌チップソーという、特殊印刷技術で摩擦を減らした新しいタイプのコーティングチップソーも売られています。新しいもの好きの方などいかがでしょう。