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2023年3月1日

海外電動工具の大容量次世代バッテリーを紹介!【電動工具】

海外電動工具の大容量次世代バッテリーを紹介!【電動工具】

リチウムイオン電池の限界と性能向上

電動工具の性能向上は著しく進んでいますがモーターをブラシレスにしようが制御をどんなに工夫しようが、バッテリーで動く電動工具のパワーを左右するのはやはりバッテリーです。極端な話、バッテリーの性能が向上してしまうだけで他の改良の全てを凌ぐ性能向上を見込むことが出来ます。(これは電動工具以外にも言える事ですが…)

そんなリチウムイオン電池ですが、4.0Ah・5.0Ah・6.0Ahとここ最近では毎年のように新電池が登場していたのに、未だ7.0Ahの電池の発売のリリースはありません。

最近のリチウムイオン業界の動向を見ていると『容量の限界』や『次世代二次電池』等の見出しが目立ちます。どうやら現行のリチウムイオン電池は容量増加の技術的限界に直面しているようです。

日経テクノロジー 2017/01/19
現行技術に迫る3つの限界、後継技術へのシフトが必須

別の記事でも言及していますが、リチウムイオン電池は電動工具メーカーではなく電池メーカーが開発しているため、電動工具メーカーが大容量電池を作るには電池メーカーの開発を待たなければいけません。

そんな中、海外の電動工具メーカーは既存のバッテリー構造から大きな変更を加え、更なるバッテリーの大容量・大出力化のための次世代バッテリーを開発し始めました。各社の次世代バッテリーの特徴として、バッテリー形状の大型化・後方互換性などが挙げられます。

DeWALT FLEXVOLT®

次世代バッテリーの中でユニークかつ最も先進的なのがDeWALTのFLEXVOLT® です。電池のスペックは60Vの3Ahと20Vの9Ahの自動切換えになっています。

FLEXVOLTが現行のバッテリーと違う点は20V電動工具と60V電動工具の両方に対応しているという事です。FLEXVOLTは端子の形状は変わらないのに、接続する電動工具に対応し20Vの出力と60Vの出力を自動で切り替えてくれる構造になっています。

FLEXVOLTの開発の背景には『ユーザーが電圧の違うバッテリー工具に縛られることなく、どの工具に使用されていることに関わらず性能に妥協のない仕事を提供する事』としているそうです。現状でリチウムイオン電池の性能向上が期待できない以上、電動工具の高電圧化によって工具性能の向上を狙うのはありと言えばありなのかもしれません

FLEXVOLTの20Vと60Vの切り替えイメージ。接続する工具によって電池の内部の配線が切り替わり、20Vの3並列と60Vの1並列を使いまわすことができる。

バッテリー内部では使われているバッテリー内部のリチウムイオンセルも増えており、既存のバッテリーが10本だったのに対しFLEXVOLTは15本のバッテリーセルが使用されています。

更に、DeWALTにはFLEXVOLTを2本使う120Vコードレス工具のコードレス卓上丸のこもあります。ここまでくるとACの電動工具と性能の差は殆どないのかもしれません。

ちなみに、DeWALT製品はAmazonで並行輸入品の取り扱いがあるため日本でもFLEXVOLTを購入できます。トップクラスの工具が欲しい方はおすすめです。(充電に変圧器が必要ですが…)

マキタの18V+18Vシリーズと同じ考え方のDeWALT 120Vバッテリー工具。

Milwaukee RED LITHIUM HIGH DEMAND 9.0

Milwaukeeの次世代バッテリー RED LITHIUM HIGH DEMAND 9.0は18Vの9.0Ahバッテリーです。

バッテリーの本数はDeWALTのFLEXVOLTと同じ15本構成になっていますが、54Vへの切り替え機能などはなく体積を増やして容量を増加させたバッテリーとなっています。

BOSCH CORE18V

BOSCHの次世代バッテリーはCORE 18Vです。18Vの6.3Ahバッテリーとなっています。

上記2社よりもバッテリー容量こそ少ないですが、CORE18Vはリチウムイオンセルの構成を変えておらず既存品と変わらないリチウムイオンセル10本構成のままで大容量化を実現しています。

これはどういうことかというと、今までの電動工具のバッテリーは18650というサイズのリチウムイオンセルを使っており、このセルを複数個組み合わせて電動工具のバッテリーを構成していました。BOSCHの次世代電池は18650から一回り大きい21700サイズに置き換えることで、体積をほとんど変えずに高容量化しています。

写真右がCORE 18Vに使用している20700サイズのリチウムイオンセル、写真左の18650サイズよりも一回り大きく、容量・出力共に大きい。

他社より容量の増加は少ないですが、その分取り回しに優れているのがCORE 18Vです。21700サイズの電動工具バッテリーを使ったことはありませんが、このくらいのサイズがインパクトドライバーなどで使えるギリギリのサイズだと思います。

海外他社バッテリーとの比較図。恐らく黄色がDeWALTで赤がMilwaukee。

Metabo LiHD

日立工機グループ子会社のMetaboも次世代バッテリーを開発しています。名称はLiHDで容量は18Vの7.0Ahです。

LiHDもBOSCHのCORE 18Vと同じく、21700サイズのリチウムイオンセルを使ったバッテリーとなっています。異なる点はBOSCHのリチウムイオンセルよりも大容量のセルを使っているという点です。

まとめ

  • ここ最近はバッテリーメーカーの大容量バッテリー開発が難航しているらしく、現在は電動工具メーカーが既存のバッテリーから形を変えて大容量化を進めている
  • 次世代電池の方向性はリチウムイオンセルを増やす(10本→15本)リチウムイオンセルのサイズを大きくする(18650サイズ→20700サイズ)の2パターン
  • DeWALTとMilwaukeeが前者、BOSCHとmetaboが後者。
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