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USB PDのAVSとは? PPSとの違いと電圧を調整できる充電の仕組み【解説USB PD】

USB PDのAVSとは? PPSとの違いと電圧を調整できる充電の仕組み【解説USB PD】

USB PDの出力電圧を細かく指定するAVS

USB PDの仕様をには、以前解説したPPSに加えてAVSという表記を目にすることがあります。AVSはPPSと同じくUSB供給電圧を変えられる給電方式ですが、同じ機能の呼び方が違うだけ、という機能ではありません。

AVSはAdjustable Voltage Supplyの略で、直訳すると「調整可能な電圧の電源」を意味します。

この機能はUSB PDの通信を使い、電力を受け取る機器が必要な電圧を指定して充電器の出力電圧を調整する機能です。

例えば、一般的なUSB PDは、5V・9V・15V・20Vの規格で定められた固定の電圧を選ぶのが一般的ですが、AVSでは、出力可能な電圧範囲内で100mV単位で出力電圧を調整できます。機器内部の回路に合う電圧を受け取れるようにすることで、電源設計や充電の効率を改善しやすくする仕組みです。

今回は、USB PDのAVSについて、固定電圧による給電やPPSとの違い、AVSの分類であるSPR AVSとEPR AVSの関係を解説します。

尚、本記事内ではUSB-IFが公開するUSB Power Delivery Specification Revision 3.2 Version 1.2(2026年8月版)を基準としています。

固定電圧のUSB PDとAVSでは、電圧の選び方が異なる

最初にUSB PDで電圧が決まる仕組みを簡単に振り返りましょう。

USB PDにおいて、電力を供給する充電器側をSource(ソース)、受け取るスマートフォンやノートPCなど機器側をSink(シンク)と呼びます。

一般的なUSB PDでは、Sourceが「5V・3A」「9V・3A」「15V・3A」のような候補を提示し、Sinkがその中から選びます。この候補を表すデータが、以前の記事でも解説したPDO(Power Data Object)です。

例えば、充電器側が9Vと15Vの固定出力しかない場合、Sinkがその中間の12Vを要求しても12Vを取り出すことはできません。

そこで、AVSを使うと、充電器が対応する範囲内から100mV(0.1V)刻みで電圧を指定できるようになります。さらには12.0V、12.1V、12.2Vのような、細かい電圧要求も使えるようになります。

固定PDOの場合、充電器側に12Vが無ければ機器は12Vを取り出すことができないが、AVSなら100mV単位で電圧を要求できる。

関連:USB PDのパワールールとは? ワット表記で電圧と電流の組み合わせを決める基本的なルール

PPSとの大きな違いは、電圧の刻み幅と電流制御

USBの出力電圧を細かく調整できるUSB PDの拡張機能としては、PPS(Programmable Power Supply)もあります。

PPSの電圧指定は20mV(0.02V)刻みであり、AVSの100mV刻みよりも細かく設定できます。

AVSとPPSの違いは電圧設定の細かさだけではありません。PPSは出力電圧に加えて電流制限値の指定ができるのに対し対し、AVSは電圧を調整できる定電圧電源として動作します。[1]

比較項目PPSAVS
正式名称Programmable Power SupplyAdjustable Voltage Supply
電圧指定の刻み幅20mV(0.02V)100mV(0.1V)
プログラム可能な電流制限あり。50mA刻みで指定PPSと同じ電流制限機能は持たない
給電の考え方要求した電圧と電流制限に応じて制御要求した電圧を維持し、受電側が消費電流を管理
適用範囲SPRのみSPR AVS/EPR AVS

PPSでは、負荷が要求した電流制限値を超えて電流を引こうとすると、Sourceが出力電圧を下げ、電流を制限する動作に移ります。

この仕組みを利用すると、Sink側がバッテリーの状態に合わせて充電器の出力を制御できるCCCVのような充電制御が可能になります。

一方、AVSでも電圧と一緒に動作電流を要求しますが、この電流値要求は、PPSのように充電器へ定電流制御を指示するものではありません。AVSの電流要求は、機器側が合意した電流を超えて取り出さないように管理する要求値です。

AVSには、SPR AVSとEPR AVSがある

USB PDには、従来の100Wまでを扱うSPR(Standard Power Range)と、最大240Wまで拡張したEPR(Extended Power Range)があります。

AVSは、当初USB PD 3.1でEPR向けに導入された仕様であり、15Vを超える範囲で最大48Vまで電圧調節するためのものでしたが、USB PD 3.2ではSPRにも拡張されています。

方式調整できる電圧範囲対応する出力クラスの例
SPR AVS9~15V30W、45W
SPR AVS9~20V65W、100W
EPR AVS15~28V140W
EPR AVS15~36V180W
EPR AVS15~48V240W

EPR AVSは、15Vから、その電源が対応する28V・36V・48Vまでの範囲を扱います。例えば140Wクラスで15~28Vを提示する電源なら、固定電圧の20Vと28Vの間にある24VもAVSとして要求できます。

AVSには2つの動作モードがあり、それぞれ対応できる電圧範囲が異なる。

比較のためにPPSの範囲も補足すると、本稿の基準であるPD 3.2では、5~11V・5~16V・5~21Vが規定されています。

AVS対応でも、すべての電圧で最大W数を出せるわけではない

SPR AVSでは、9~15V側と15~20V側で、それぞれに対応する電流の上限があります。

例えば、65Wを供給できる状態で、15V固定PDOが3A、20V固定PDOが3.25Aの電源を考えてみます。5A対応ケーブルを使い、規格の基本的な電流設定に従う場合、次のようになります。

AVSで要求する電圧この例での電流上限計算上の最大電力
12V3A36W
18V3.25A58.5W
20V3.25A65W

12Vで65Wを出すには約5.42Aが必要ですが、この例の12V出力は3Aまでです。AVSは、対応範囲の電圧を選べる機能であり、電圧を下げた分だけ無制限に電流を増やせる機能ではありません。

EPR AVSでは、提示された電力を要求電圧で割った値と5Aのうち、小さい方が電流の上限になります。SPR AVSとEPR AVSでは、電圧範囲だけでなく、供給可能な電流を読み取る考え方も異なります。

あくまでも充電器側の最大供給電流に依存する。

電圧を合わせることで、機器内部の電源設計を最適化しやすくなる

AVSを使用するメリットは、機器側で使いやすい電圧をUSB PD充電器から直接受け取れることです。

USBの入力電圧とバッテリーや内部回路に必要な電圧の関係を調整できれば、変換回路を効率のよい条件で動作させやすくなります。

例えば、USB PDにおける12Vの扱いはオプションであり必須とする電圧ではなく、一部のUSB PD充電器は12V出力を備えていない製品もありますが、AVSが普及すればUSB PDでも12Vが扱いやすくなり、さらにAVS EPRであればUSBから24Vも取り出すことが可能になります。そうすれば、既存の12V/24V機器のUSB電源化の移行も容易になると考えらえます。

機器の内部が12Vで動作する場合、降圧や昇圧で適切な電圧に調整しなければいけないが、AVSであれば直接必要とする電圧を要求できる。

AVSを利用するには、充電器と受電機器の両方が対応する必要がある

AVS対応のUSB充電器を使用しても、接続するスマートフォンやノートPCがAVSを要求しなければ、AVSでの給電にはなりません。

反対に、機器がAVSに対応していても、充電器が対応するAVS PDOを提示しなければ利用できません。

PPSとAVSも別の方式です。「PPS対応」と書かれているだけではAVS対応とは判断できず、EPR AVSへの対応だけでSPR AVSへの対応が分かるわけでもありません。この辺りは、最終的にはユーザーがPD拡張規格の有無を確認する必要が無くなることが理想ですが、現状ではAVS対応を確認する必要があります。

また、USBケーブルは「AVS専用」である必要はありませんが、使用する電流と電圧に適合している必要があります。

身近な採用製品として、Appleは「40Wダイナミック電源アダプタ(最大60W対応)」の公式製品ページでAVSへの対応を明記しています。

AVSは、USB PDで必要な電圧を選ぶための機能

AVSは、USB PDの固定電圧の間を100mV刻みで指定し、機器に合う電圧を受け取れるようにする機能です。

PR AVSは9~15Vまたは9~20V、EPR AVSは15Vから最大48Vまでを扱い、スマートフォンから高出力機器までの利用範囲の拡大を視野に入れた拡張規格です。

PPSとの違いとしては、20mVと100mVという電圧の刻み幅に加え、プログラム可能な電流制限の有無が要点です。PPSは電圧と電流制限を組み合わせた制御に対応しており、AVSは機器が求める入力電圧を供給する役割を担います。

PPSとAVSは電圧を柔軟に変更できる点では同じ機能だが、充電器側による電流制限出力の有無が違いとなる。

参考

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