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マキタとHiKOKI(ハイコーキ)の違い【第三版】

マキタとHiKOKI(ハイコーキ)の違い【第三版】

国内の大手電動工具ブランドにはマキタとHiKOKIがありますが、この違いについて販売店の意見やネットの総評、私的見解も含めて考えてみました。

本記事は、2026年7月公開の記事、および2022年1月の第二版からさらに最新情報や筆者の見解を加えた第三版です。

国内の大手電動工具メーカはマキタとHiKOKI(日立工機)

各電動工具メーカーが開示する決算情報から国内プロ向け電動工具の市場規模と各シェアを算出(2023年版) – VOLTECHNO調べ

電動工具メーカーにはさまざまなブランドがあり、日本国内ではマキタ・工機HD・京セラ・マックスの4社が台頭しており、それに加えて、世界市場で展開を行うSTANLEY Black&Decker・ボッシュ・ヒルティ・TTIなど海外メーカーを含めた複数の電動工具ブランドが入り混じった市場が形成されています。

2026年時点の国内市場の動向としては、愛知県に本社を置く株式会社マキタが国内トップのシェアで独走状態にあり、2番手のメーカーとしては工機ホールディングス株式会社が展開するHiKOKI、そしてマックス・京セラ・海外電動工具ブランドが続く市場構造になっています。

マキタ:製品ラインナップとアフターサポートに強く、多数のユーザーの指示を集めるトップブランド

マキタはリチウムイオンバッテリーで動作する充電式電動工具のシリーズラインナップ、そして強固な営業網とマキタ製品取扱店の多さによる製品購入の容易さとアフターサポートに強みを置く企業です。

現在のマキタが主力展開を行っている充電式電動工具シリーズは、18Vシリーズが399モデル、40Vmaxシリーズが261モデルと両シリーズとも国内屈指の製品ラインナップを誇り、建設関係の電動工具以外にも園芸・農機関係や清掃機器、工場作業からアウトドアまで幅広い作業に対応できるのが大きな強みとなっています。

また、そのプロユーザーを支えているのがマキタのアフターサポート体制に裏打ちされた「修理3日体制」です。

なぜ、マキタは強いのか|マキタリクルートサイト

マキタ製品の修理は、マキタ販売店やマキタ営業所への依頼持ち込みが可能です。マキタの修理体制は、簡単な修理であれば修理工場への輸送などは行わず、マキタの営業担当自らが修理やメンテナンスを行うため、修理依頼から修理見積、修理完了までのサイクルが早いのが特徴です。

電動工具を使用するユーザーはプロユーザーが多いこともあり、故障や不具合によって作業が止まってしまうと現場が止まってしまうこともあるため、迅速に修理対応を行ってくれるマキタのアフターサポート体制は、多くのプロユーザーの支持を集めています。

HiKOKI:独自技術と使い勝手に優れる電動工具ブランド、価格面でも若干優位性あり

HiKOKI(ハイコーキ)は、工機ホールディングス株式会社が展開する電動工具ブランドです。

HiKOKIの前身は、日立製作所子会社の日立工機であり、2017年に日立グループからの離脱と米投資ファンドKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)の買収によって、現在の工機ホールディングスと呼ばれる企業形態に移行しました。

HiKOKIの特徴は、マルチボルトと呼ばれるバッテリープラットフォームによる、1つのバッテリーで18Vと36V動作を切り替えられる革新的とも言えるコードレス電動工具シリーズを展開している点です。

マルチボルトバッテリーは、現在のHiKOKIが展開を行っている主力の電動工具用バッテリーであり、従来の18Vコードレス電動工具と高出力の36Vコードレス電動工具を同じバッテリーで共用できるため、仕様の異なるバッテリーや複数の充電器を持ち歩くことなく使用できるのが強みです。

HiKOKIのもう一つの強みが製品自体の使い勝手の評価が良いことです。

HiKOKIは企業規模としてはマキタより小さいため、製品展開も後発寄りではあるものの、既存販売の他社品を研究・改良して製品展開を行う傾向が強く、フィーリングが重視される丸ノコやパワーを必要とするハンマドリルなどの分野ではユーザーから高い評価を受けています。

また、コードレス保冷温庫やエアダスターなどは、先行して販売した競合他社の製品を研究した上で独自機能を搭載することによって、競合製品にはない魅力を備えた製品になっており、この点もHiKOKIユーザーからは高い評価を受ける要因となっています。

そして、もう一つの特徴としては、HiKOKIは定期的にバッテリーが追加で1個付いてくる「バッテリー+1」キャンペーンを行っている点です。予備バッテリーを買い増しするコストを考えると、キャンペーン期間にHiKOKI製品を購入することでコストパフォーマンスの観点ではトップクラスの電動工具ブランドと言える存在になります。

このキャンペーンは2020年頃の一昔前であれば大々的に広告を打ってキャンペーンを告知していたのですが、現在は対象製品も以前ほど活発ではなく、販売店限定・地域限定のように小規模になりましたが、今でも各地でキャンペーンは実施されているため、HiKOKIのプロ用コードレス電動工具を低コストで導入できるチャンスがあります。

マキタとHiKOKIの製品展開方針の違い

マキタとHIKOKIは電動工具を主力製品として取り扱うメーカーですが、両社の方針は大きく異なっています。

その両者の製品開発の考え方で両社の特徴の違いが見えるのが、特許出願の傾向です。

マキタの特許出願の特徴としては電動工具業界に存在しない新製品の傾向が多く見られます。より具体的に言うと、マキタは電動工具の性能向上やシェア確保よりも、電動工具そのものの市場規模を大きくするための製品展開を行う指向性が強いメーカーです。

実際の製品展開でも、マキタが強みを置くのは建設業以外にも園芸機器による緑地管理・農業関係のユーザーやクリーナーのような清掃業ユーザーに向けた製品開発を積極的に進めており、新しいマキタユーザーの獲得に努めています。

その一方で、HiKOKIの特許出願の傾向は製品性能や生産性を向上させる内容の特許が多く、製品傾向としては電動工具自体の性能やコストを下げることによって他社のシェアを確保することに重点を置いているようです。

HiKOKIの製品展開に関しても、園芸機器や清掃関係の他社の追従としての製品展開は行っているものの、製品展開の方針としては建設業のみを対象としている製品が多く、基本的には他社の製品展開による売上効果や改善点を確認した後に製品開発を行っている印象が強いブランドです。

マキタとHiKOKIの電動工具の性能的な違い

マキタとHiKOKIの主要な製品の性能を比べてみます。

昨今の充電式電動工具はリチウムイオンバッテリーの性能やモータ技術向上の頭打ち感も強く、基本的なカタログスペックとしては横並びであり、昨今の電動工具の使い勝手のトレンドはフィーリングや重心であるため一概に比較できるものではなくなっています。

インパクトドライバ

製品名 TD002G WH36DD
外観
特徴 デュアルスプリング
アプリカスタマイズ
トリプルハンマ
細ビスモード
アプリカスタマイズ
能力 小ねじ:4~8mm
普通ボルト:M5~M16
高力ボルト:M5~M14
コーススレッド:22~125mm
小ねじ:4~8mm
普通ボルト:M5~M16
高力ボルト:M5~M14
テクスねじ:φ3.5~φ6
コーススレッド:22~125mm
最大締付トルク 220N・m 200N・m
無負荷回転数 最大 3,700min-1 最大 3,700min-1
打撃数 最大 4,600min-1 最大 4,100min-1
動作電源 40Vmax マルチボルト36V
重量 1.6kg 1.6kg
寸法 119×86×247mm 118×243×111mm
センタハイト29mm
本体価格 31,100円(税別) 31,100円(税別)
販売年月 2022年1月 2024年02月

インパクトドライバの36Vモデルを比較すると、締付トルクではマキタ TD002Gの方が220N・mと高くなっています。また、デュアルスプリング採用によってハンマ打撃時のフィーリングに優れており、コーススレッドを何本も打ち込むような作業には快適な一台となっています。

HiKOKI WH36DDはカタログスペック的には若干見劣りするものの、HiKOKI独自のトリプルハンマと細ビスモードによるカムアウト低減機能があり、太いコーススレッドから細いビスの精密作業まで幅広く対応できるオールラウンダーな機種になっているのが特徴です。

インパクトドライバに関しては、どちらの機種でも対応できる作業としては大きな違いはなく、どちらかと言えば機能やフィーリングに違いで選ぶことになりそうです。

丸ノコ (165mmチップソー)

製品名 HS001G C3606DB
外観
チップソー径 165mm 165mm
最大切込み深さ 90°時:66mm
45°時:46mm
逆5°時:42mm
90°時:66mm
45°時:46mm
逆5°時:57mm
無負荷回転数 スピードモード:5,500min-1
仕上モード:4,300min-1
高回転モード:5,600min -1
仕上げモード:4,300min -1
サイレントモード:2,000min -1
バッテリー 40Vmax マルチボルト36V
無線連動 HS002G
スマホカスタマイズ ×
重量 3.3kg 3.3kg
寸法 299×188×258mm 285×188×263mm
本体価格 49,800円(税別) 48,000円(税別)
販売年月 2019年10月 2023年1月

丸ノコの基本的なカタログスペックに関しては基本的に同じ仕様であり、切断能力もチップソーのサイズで決まってしまい、切断性能もモーター以外にチップソーなどでも変わってしまうため、一概には比較できない製品となっています。

結局、丸ノコに関してはフィーリングや手持ちのバッテリーに依存してしまうことが多いので、この辺りは完全に好みと言えそうです。

ちなみに、個人的な好みの話にはなってしまうのですが、充電式丸ノコのフィーリングとしてはHiKOKIの方が使いやすいかなと思っています。

充電式フレーミングネイラ(海外市場向け18V 21°樹脂連結釘)

製品名 XNB03Z NR1890DRA
外観
連結釘 21°樹脂連結釘 21°樹脂連結釘
釘長 2~3-1/2インチ / 50~90mm 2~3-1/2インチ / 50~90mm
釘径 0.113~0.148インチ / 2.9~3.8mm 0.113~0.148インチ / 2.9~3.8mm
連続打ち
打ち込み速度 最大3本/秒
バッテリー 18V 18V
重量 11.9 lb / 約5.4kg 8.4 lb / 約3.8kg
(本体のみ)
寸法 299×188×258mm 285×188×263mm
販売年月 2025年 2025年

海外の事例となりますが、現在の海外市場では釘打ち機の充電式電動工具化が進んでおり、特にフレーミングネイラと呼ばれる躯体工事向けの電動釘打ち機の製品展開が活発に行われています。

この分野で強みを持つのがHiKOKI(北米ではmetabo HPT)であり、北米地域で常圧エア釘打ち機の高いシェアを持つ流れから電動釘打ち機の開発も精力的に行っており、工具内部で空気を圧縮して打ち出すエアスプリング方式では他社を圧倒する性能とシェアを持っています。

マキタも2025年に充電式電動釘打ち機の分野に新規参入したものの、同年HiKOKIが開発した新型のフレーミングネイラ NR1890DRAの性能比較では釘打能力としては同じ仕様ながらも本体重量で約1キロ近い重量差となってしまい、電動釘打ち機の分野ではマキタがHiKOKIの後塵を拝す状態となっています。

北米のホームセンターLowe’sの電動工具コーナーではHiKOKI (metaboHPT)の釘打ち機が並んでいる。その一方で、ドリルや丸ノコのような電動工具はあまり置かれていない。

マキタとHiKOKIのアフターサポート面の違い

マキタとHiKOKIで最も異なるのが、アフターサポート面の違いです。

マキタに関しては先程のマキタの特徴として説明した「修理3日体制」を掲げていることもあり、マキタ販売店とマキタ営業マンの巡回・見積もり・修理による体制から、万が一の故障や不具合が起きても比較的早くてレスポンスの良い修理サポートを受ける事が可能となっています。

その一方で、HIKOKIのアフターサポート体制はマキタ程ではなく、マキタのように「近くの営業所に持ち込んで、比較的短期間で戻ってくる」という印象が定着しているブランドと比べると、HiKOKIは修理依頼の動線がやや遠く感じられやすい面があります。

HiKOKIは「WEBによる修理のお申込み」として販売店を経由しない修理体制も敷いていますが、修理依頼は梱包の手間が必要な運送会社による集荷であり、公式に「修理品が手元に届くまで約14日間」と記載されている点を考えれば、修理依頼品を預けて5営業日程で修理品が返ってくるマキタに比べれば、現場作業には大きな支障が出てしまうとも言えます。

このあたり、マキタが「工具を買った後の面倒見の良さ」まで含めてブランド価値を築いているのに対し、HiKOKIは製品単体の性能やコストパフォーマンスで選ばれやすいブランドです。しかし、プロ用電動工の世界では、購入時の性能だけでなく、故障したときにどれだけ早く現場へ復帰できるかも重要な指標の一部であり、この点が、両社のブランド選択における大きな違いになっていると考えられます。

筆者がとある販売店で見かけたHiKOKI修理対応についての張り紙。メーカー側の都合で一方的に1ヵ月修理対応を伸ばすと告知するのは流石に良くないのではと思った1枚。

マキタと工機HDの世界的な知名度の違い

日本国内では、マキタとHiKOKIは電動工具の2大ブランドとして両社とも高い知名度を誇りますが、世界的には若干事情が異なります。

マキタは世界的な電動工具メーカーであり、電動工具ブランドとしての世界シェアは2~4位に位置しています。HiKOKIに関しては、先述の電動釘打ち機に限れば北米地域で高いシェアは持つものの、電動工具としては決して高いシェアを持つわけではありません。

実際の世界的な知名度の1つの指標として、GoogleのサービスであるGoogleトレンドでマキタとHiKOKIのキーワード検索数を調べると、下の画像のようになります。

マキタを79とすると、HiKOKIは北米ブランドのmetabo HPTを足しても3であり、世界的な知名度は約25倍差もあります。

ちなみに、日本国内においてもマキタとHiKOKIの知名度の差は8倍程あり、これは製品展開を行っている製品ラインナップの差や充電式園芸機器の普及度、マキタのターボ(クリーナー)が大きく影響しているものと想定しています。

マキタと工機HDの企業経営的な方針の違い

マキタは国内トップの電動工具メーカーであり世界的にも高いシェアを持っていますが、この数年の売上高は7,000億の横ばいが続いており、企業成長としては停滞気味の状態です。

そんな中、マキタは2026年3月期の決算説明会で「2030年度に目指す姿」として40Vmaxシリーズを中心とした「事業領域の拡大」と「販売人員の増強によるソリューション提案力の強化」を掲げた成長戦略を取ると発言しています。

この資料では具体的な売上目標には触れていないもの、現状の売上高7.776億円に対して、既存分野の売り上げ増と40Vmaxシリーズの注力による1,500億円規模の増加を見込んでいると記載している点から、大台となる売上高1兆円きぼを視野に入れているのではないかと想定しています。

その一方で、工機HDは経営的に冴えない状態が続いており、投資ファンドの経営10年目が近い現状においてもイグジットの道筋は見えていない状態です。

近年の工機HDの状況としては、「早期退職制度の実施」「茨城県ひたちなか市さわ工場の閉鎖」「国内営業支店の全閉鎖」「単独従業員数が年間で1割減少」「オフィサーの8割が外国人」と、2017年のHiKOKIとして再出発をした時から企業体制は大きく変化しています。

一応、単体決算に関しては、2018年から2024年まで右肩下がりだった売上高も2025年には上昇に転じ、ようやく光明が見えてきた状況でではあるものの、営業利益は以前として赤字が継続しており、経営的には予断を許さない状況が続いているものと考えられます。

マキタとHiKOKIは結局何が違うのか

マキタとHiKOKIの関係性をもう少し身近な企業で例えるなら、自動車業界におけるトヨタとスバル、あるいはトヨタとマツダの関係に近いのではないかと考えています。

どちらも同じ自動車メーカーであり、実際に車を購入するユーザーから見れば比較対象になります。

スバルやマツダにも独自の技術思想や固定ファンがあり、車種によってはトヨタ車よりも強い魅力を持つモデルもあります。しかし、企業規模、販売網、アフターサービス体制、製品展開の幅まで含めると、トヨタは圧倒的に大きな存在です。

これを電動工具業界に置き換えると、マキタはまさに国内電動工具市場における「トヨタ的な存在」と言えます。

電動工具だけでなく、園芸機器、清掃機器、現場用家電、アウトドア系製品まで幅広く展開し、販売店網や営業所、修理サポート体制まで含めてブランド価値を構築し、単に性能の良い工具を売るだけでなく、「どこでも買える」「困った時に周りに頼ることができる」「修理に出しやすい」という安心感まで含めて、プロユーザーの仕事環境に入り込んでいるのがマキタの強みと言えるでしょう。

一方のHiKOKIは、スバルやマツダのように、技術的な個性や製品ごとの尖った魅力で評価されやすいブランドです。

マルチボルトやACブラシレスモータ、高圧エア工具など、製品単体で見ると魅力的な技術や独自機能を持っており、その点を評価してHiKOKIを好んで使うユーザーも少なくありません。

ただし、経営規模や販売・サポート網まで含めると、マキタとHiKOKIは「同じサイズの企業同士が正面からぶつかっている」というより、最大手のマキタに対して、HiKOKIが技術力や価格競争力、製品ごとの完成度で対抗している状態でです。マキタとHiKOKIは「同格の二大巨頭」というより、最大手のマキタに対して、HiKOKIが技術力と製品力で食い下がっている関係と表現した方が近いのかもしれません。

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