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2024年7月7日

ディスクグラインダ(ヘビーサンダー)とは【工具の特徴・選び方解説】

ディスクグラインダ(ヘビーサンダー)とは【工具の特徴・選び方解説】

鉄の加工は木材やプラスチックに比べると一見難しそうな作業です。しかし、適切な道具を使えば簡単に切ったり削ったりできます。

ディスクグラインダとは?

ディスクグラインダは研磨や切断に使用する電動工具です。

金属や木材・コンクリートなど幅広い材料に使用できる万能工具です。単純に「グラインダ」と呼ばれたり「サンダー」や「ヘビーサンダー」あるいは「ディスクサンダー」などとも呼ばれたりします。

ディスクグラインダの先端には切断砥石をはじめ、さまざまなディスクを取り付けることができます。

取り付けるディスクを交換すれば切断・切削・研磨などの幅広い作業を行うことができ、金属非金属・木材などを問わず材料の加工や仕上げを行えるのが特徴です。

さまざまな形状・材料の研削・研磨に対応

「金属を切断するならどんな工具を買えばいい?」と聞かれたら、間違いなくディスクグラインダと答えます。

その理由としては「切断以外にも色々な作業ができる」「工具本体の価格が安い」「消耗品の単価が安い」などの理由が挙げられます。

金属切断作業を行える電動工具にはディスクグラインダのほかに高速切断機チップソーカッターなどもありますが、ディスクグラインダは構造も単純で、さまざまな状況下でオールマイティに使用できる工具です。

切断できる金属も幅広く、ディスクを交換すれば鉄・ステンレス・アルミ・焼き入れ鋼など幅広い材料に対応できます。構造も単純なのでほかの工具に比べて価格が安く種類も豊富です。消耗品の価格も安く砥石は一枚100円程度で購入できます。価格の割によく切れるのでコストパフォーマンスにも優れています。

グラインダのディスクサイズにはΦ100mm~Φ180mmまでの大きさありますが、交換できるディスクの種類はφ100mmが一番豊富なので、取り回しが良くコストパフォーマンスにも優れているΦ100mmのグラインダがオススメです。

ディスクグラインダで切断する時の注意点

グラインダを使うには、砥石(ディスク)を装着する必要があります

切断砥石は各社から販売されていますが切断性能に大きな違いはありません。価格や好みで選ぶ方が多い印象です。

切断砥石ごとの違いとしては1mm~2.5mmの厚みがあります。薄い砥石になるほど切断が早くなる印象がありますが、薄手の材料には厚い砥石を、厚手の材料には薄い砥石を使用すると調子がいいようです。1

非鉄系の材料を切る場合は材料に合った切断砥石を使いましょう。

アルミなどの軟らかい金属を鉄用の切断砥石で切断すると回転砥石の自生作用が働かなくなり、砥石がすぐダメになってしまいます。

切断砥石は切断専用の砥石なので面を使って研削を行うと砥石が破裂します。絶対に行わないようにしましょう。

研磨・研削作業もできる

この記事では主に鉄を切る道具として紹介していますが、本来のグラインダは研削や研磨に使う電動工具です。

研削作業ではディスクの面の部分を材料に当てて研削を行います。研削用ディスクにはオフセットディスクや多羽根ディスクなど面の部分で切断できるディスクを装着します。

グラインダの研削は主に溶接したビートの除去やバリ取りに使いますが、木材の削りだしやコンクリートの面取りなどの作業にも使用できます。

作業内容 ディスク 外観
金属材料の切断 切断砥石
金属材料の研削 研削砥石
コンクリートの切断・溝入れ ダイヤモンドカッター
コンクリートの研削・面取り ダイヤモンドカップ
木材・金属材料の粗削り・面取り 多羽根ディスク
錆取り・塗装はがし カップブラシ

作業能力は高いが、作業時には火花が散るので注意

価格も安く、取り回しにも優れるディスクグラインダですが、欠点もあります。

ディスクグラインダの金属加工は砥石の回転運動による研削切断なので、高速回転するモーターの動作音や砥石が削れる時の衝撃・摩擦音で大きい音が発生します。

金属切断は研削砥石の自生作用によって砥石の破片と削れた材料で火花も大量に発生し、コンクリートの切断では細かい粉塵が広い範囲に飛び散ってしまうので、周囲の安全を十分に確保した上で作業を行わなくてはいけません。

ディスクグラインダの種類

ディスクグラインダにはモーター・電源・スイッチの違いによっていろいろな種類があります。それぞれどのような特徴があるかを解説します。

モータの種類

ブラシモータ搭載モデル:広く普及している定番機

各社から販売されており、価格帯も\3,000~\20,000までとさまざまです。

DIYなどでは安価なモデルでも十分ですが、500W前後の定格電力が低いものが多いので、力不足を感じたら、1,000Wクラスの高出力モデルを購入するのがオススメです。

ACブラシレスモータ搭載モデル:HiKOKI独自の高性能モータ

ブラシがなくコイルの断線やコンミの摩耗がないためメンテナンスフリーなのが特徴です。

ACブラシレスはコードレスのブラシレス工具の特徴そのままに軽量・コンパクトボディで取り回しに優れています。そして最大の特徴は継ぎコードで電圧降下してもパワーが落ちない事とエンジン発電機で使用できるという事です!!

ディスクグラインダのような起動時の消費電力が大きく、インバーターが搭載されていても容量が小さなエンジン発電機で急激な負荷変動を与えると、急激な電圧変動が発生して電動工具に内蔵されている電子制御回路などが破損することがあります。

ACブラシレスモーターはメーカー側が明確にエンジン発電機に正式に対応しており、故障の心配もなく安心して使用できます。

バッテリー式ブラシモータ搭載モデル:バッテリー式の低価格モデル

バッテリーで使うタイプのディスクグラインダです。

コードレスのため取り回しに優れ、酷使させなければACのグラインダに負けず劣らずの作業を行うことができます。

しかし、それでもコードレスのグラインダはACに比べてモーター過負荷や連続作業に弱いため、無茶をしないように使いましょう。

個人的にはハンドルをつけてバッテリー側を掴んで作業するといい感じです。コードもなくACのグラインダより持ちやすいのでバッテリーの重さはあんまり気になりません。

コードレスタイプはプライベートブランドや新興メーカーによる取扱は殆どありません。メーカーはマキタ・HiKOKI・パナソニック・BOSCHから選ぶといいでしょう。

バッテリー式ブラシレスモータ搭載モデル:バッテリーでもハイスペック

最近発売されたブラシレスモーターを使ったディスクグラインダです。国内ではマキタと日立工機から販売されています。

ブラシレスモーター採用による接点がなくなったことによる長寿命化と、高効率によるパワーの向上で使い勝手がよくなっています。変速機能も搭載されたためステンレスの研磨や木材の切削など、より幅広い材料に対応しています。

持つところにくびれがあり持つところの太さも細く握りやすいのが特徴です。

スイッチの種類

トグルスイッチ:昔ながらの定番スイッチ

古いディスクグラインダで採用されているのがトグルスイッチ方式です。本体後方にスイッチが装着されON/OFFの操作時には両手で保持する必要があります。

事故が起きたときにすぐに停止できないので、プロ向け用途でこのスイッチ方式を採用する製品は減っています。

現在でも家庭向け・低価格製品などでは販売は続けられていますが、このスイッチ方式のグラインダを禁止にする現場も多く、安全性の観点からもあまりおすすめはできません。

スライドスイッチ:取り回しに優れる片手ワンタッチ

参考:マキタ GA001G

現在の主流のスイッチ方式がスライドスイッチ方式です。本体の握る部分にスイッチが装着されていて、片手でON/OFF操作できます。

スイッチを押し込むだけでOFFにできる構造なので比較的安全性の高い方式です。

パドルスイッチ:安全性が高いスイッチ方式

参考:マキタ GA009G

最も新しいスイッチ構造がパドルスイッチ方式です。握る部分全体が電源スイッチになっていて、オフロックレバーを解除した状態で握ることで電源がONになる構造になっています。

グラインダの持ち方が固定されてしまうのと、常に握らなければいけないので作業性は少し悪くなりますが、安全性の観点では最も優れているため、パドルスイッチのグラインダしか許可されない現場もあります。

ディスクグラインダの付加機能

変速

変速機能は回転速度を調節する機能です。

鉄材料は焼けを防ぐために低速域、石材は切断スピードを上げるため高速域など、単一のグラインダで幅広い材料に対応できます。

電子制御

ソフトスタートや定速度制御、過負荷を検知して停止させる機能全般を電子制御といいます。

ソフトスタートはゆっくり回転を始める機能で始動時の衝撃から工具の滑り落ちを防ぐ効果があります。

定速度制御については、作業効率を落とさないように回転数を維持する制御です。

過負荷は過電流によってモーターが焼けないようにする機能です、ちなみに連続使用によるモータ加熱では停止しないので連続作業時間は守りましょう。

再起動防止

スイッチがONのままコンセントを接続しても(バッテリーを刺しても)回転しないようにする機能です。

ブレーキ

電源をオフにしたときすぐに回転が止まる機能です。

ディスクグラインダは電源をOFFにしても惰性で回り続けますが、ブレーキが付いていればすぐ止まるので事故の防止やディスク交換作業の効率化などメリットがあります。

二重絶縁

製品内部の絶縁が破損した時に発揮される、もう一つの絶縁構造を搭載した製品を表すマークです。このマークは電気用品安全法に基づく技術上の基準に適合した製品を表します。

グラインダは常に振動にさらされ、鉄粉など導電性の粉塵が舞う環境で使用さる工具です。コイルや内部配線の被膜がはがれ、むき出しの銅線と鉄粉がショートしてハウジングやシャフト経由で作業者に感電する可能性も高いため、感電に対する対策がなされていなければいけません。

二重絶縁構造では、樹脂ハウジングや絶縁処理を行ったシャフトの採用によって作業者が感電しないような構造を加えているのが特徴です。

二重絶縁の電動工具はアースを取る必要が無く2Pプラグを使用します。またコードを変更してアース付きの3Pプラグに変えてもアースを接続するべき場所がありません。

グラインダは危険な工具、装備は万全に

ディスクグラインダは幅広い作業に使える高出力な万能工具なので、一歩間違えれば簡単に事故に直結してしまう道具でもあります。少しでも危険な作業だと思ったら作業環境を考えなおして、自分の防護を見直すなどの配慮が必要です。

本来、グラインダは切断作業を行う工具ではありませんが、切断作業の需要が高かったため切断砥石用のカバーの装着に限り切断作業もできるようになった経緯があります。切断作業を使うときは絶対に切断砥石用のカバーを付けなければいけません。どうしても砥石カバーを外さなければいけない場合は、フェイスカバーや保護手袋などを装着するようにしましょう。

一番やってはいけないのがグラインダにチップソーを取り付けることです。回転砥石とチップソーでは必要な回転数やモータトルクが異なるので、刃物が飛散したりキックバックしたときなど作業者が怪我をすることがあります。

グラインダにはできるだけハンドルを装着しましょう。切断でも研削でもそうですが、片手でグラインダを使っているとキックバックしたときに暴れて作業者に跳ね返ってくる可能性があります。

ディスクグラインダのオススメ製品

E-Value EDG-550 低価格で使いやすいDIYグラインダ入門機

DIY向けに強い藤原産業が販売しているE-Valueブランドの入門向けディスクグラインダです。

EDG-550は3,000円を切る低価格のグラインダながら出力は550Wと十分な性能を持ち、切断作業から研磨・さび落としまでオールマイティに活躍できるグラインダです。

保護カバーに再度ハンドル・二重絶縁構造も搭載しているので安全性もOK。SK11スタンドのスタンドセットも販売されているのでそちらと合わせて使うのもおすすめです。

本体サイズ 全長275mm 重量 1.6kg
回転数 11000min-1 ディスク径 100mm
電源 AC100V 出力 550W
モーター方式 ACブラシモーター スイッチ方式 トグルスイッチ

HiKOKI FG10SS2 プロ向けモデルと同型のDIYグラインダ

HiKOKIが販売しているDIYモデルのグラインダがFG10SS2です。

ほかのDIYブランドのグラインダより少し高価ですが、このFG10SS2はHiKOKIが海外で販売しているプロ向けモデルG10SS2と同等の製品なので、DIYモデルでありながらプロモデル相当の性能を持っています。

HiKOKI製品はWeb修理受付で修理に簡単に修理に出せるので、修理対応も容易で長年使えるグラインダです。

本体サイズ 重量 1.4kg
回転数 12,000min-1 ディスク径 100mm
電源 AC100V 出力 600W
モーター方式 ACブラシモーター スイッチ方式 スライドスイッチ

HiKOKI G18DSL2 低価格なコードレスグラインダ

プロ向けの電動工具メーカーHiKOKIが販売しているプロモデルの18V充電式グラインダがG18DSLです。

コードレスのプロ向けグラインダでありながら低価格なので、ちょっとした作業にもおすすめの1台です。

G18DSL2は2020年にモデルチェンジが行われ、過負荷耐力が従来モデルG18DSL比で1.6倍にアップしています。

本体サイズ 303×60mm 重量 2.0kg
回転数 9,000min-1 ディスク径 100mm
電源 18V 出力
モーター方式 DCブラシモーター スイッチ方式 スライドスイッチ

HiKOKI G10VE2 ACブラシレスモーターを搭載の高性能グラインダ

ACブラシレスモーターを搭載するグラインダがHiKOKIのG10VE2です。

ACブラシレスモーターによって細径スリム・軽量ボディでありながら1,050Wの出力とハイパワー高効率を実現したφ100mmACグラインダの最上位モデルです。

高度な回転制御も搭載していて、キックバック軽減システムや再起動防止機能・ソフトスタートに無段階変速機能など、ディスクグラインダを使用するプロユーザーであれば1度は使ってみたいモデルです。

本体サイズ 305mm 重量 1.6kg
回転数 2,800~10,000min-1 ディスク径 100mm
電源 AC100V 出力 1,050W
モーター方式 ACブラシレスモーター スイッチ方式 スライドスイッチ

マキタ GA412D 18Vグラインダの最上位モデル、無線連動で石材作業にも対応

電動工具のトップメーカーマキタの18V充電式電動工具の最上位モデルがGA412Dです。変速機能・防じん防水・キックバック反動低減・無線連動AWS搭載と充電式ディスクグラインダに搭載される機能全部入りのモデルです。

サイズ展開も豊富で、φ125mmディスク対応のGA512D、パドルスイッチモデルのGA418D/GA518D、X-LOCK対応のGA420D/GA520Dと、種類も豊富で用途に応じた最適なモデルを選べるのも特徴です。

本体サイズ 382mm 重量 2.4kg
回転数 3,000~8,500min-1 ディスク径 100mm
電源 18V 出力
モーター方式 DCブラシレスモーター スイッチ方式 スライドスイッチ

HiKOKI G3610DA AC電源相当のマルチボルトシリーズ対応グラインダ

HiKOKIのマルチボルト36VシリーズのグラインダがG3610DAです。バッテリー電圧を上げてAC電源式グラインダ並みの能力を実現しています。

従来の18Vモデルでは困難だった重負荷作業も効率よく行えるようになり、切断・研削作業共にトップクラスの性能を持っています。

本体サイズ 357mm 重量 2.6kg
回転数 3,000~10,000min-1 ディスク径 100mm
電源 36Vマルチボルト 出力 1,270W
モーター方式 DCブラシレスモーター スイッチ方式 スライドスイッチ

マキタ GA001G 40Vmaxシリーズ最強の充電式ディスクグラインダ

マキタ最新の充電式電動工具シリーズ40Vmax最新のグラインダがGA001Gです。新開発の40Vmaxバッテリーは防水規格IPX6に適合し、高い耐久性を持っています。

切断スピードはAC電源のグラインダ比率で約40%アップ。高耐久性を実現する大型ベアリングに新型スイッチの搭載でで、過酷な現場でもガンガン使えるプロ向け最強のグラインダです。

本体サイズ 382mm 重量 2.4kg
回転数 8,500min-1 ディスク径 100mm
電源 40Vmax 出力
モーター方式 DCブラシレスモーター スイッチ方式 スライドスイッチ

ディスクグラインダまとめ

使える材料鉄・ステンレス・焼き入れ鋼・アルミ・木材・コンクリート
使える形状板金・ワイヤー・金属棒・パイプ
利点幅広い材料に対応・ディスク交換が可能
欠点火花が散る・作業音が大きい・危険性が高い

脚注

  1. 参考:今週の問題(切断砥石)- 大工道具屋のひとりごと
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