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電動工具互換バッテリーの現状と今後 ―合法でも安全とは限らない市場の課題

電動工具互換バッテリーの現状と今後 ―合法でも安全とは限らない市場の課題

電動工具用の互換バッテリーとは

当サイトVOLTECHNOでは、2018年に公開した記事「電動工具の互換バッテリーを分解、検証してわかる安さの理由」を皮切りに、主にマキタ用の互換バッテリーを取り上げ、表示容量の信頼性や保護回路の安全性などを検証してきました。

近年の電動工具用互換バッテリーを見ていると、中国製リチウムイオンセルの品質向上や保護基板の高機能化が進んでおり、2018年当時と比べれば製品全体の水準は幾分改善しているように感じます。

電動工具用の互換バッテリーは、特定メーカーの電動工具や充電器で使用できるよう、第三者が設計・製造した非純正バッテリーを指します。純正品より安価に購入できることから広く流通していますが、その違いはメーカー名や販売価格だけではありません。

純正バッテリーの詳細な製品仕様や使用部材は原則として外部に公開されていません。そのため、互換バッテリーの製造・販売事業者は、搭載するセルや保護回路、端子構造、ケース設計、工具や充電器との通信機能などを独自に設計し、品質管理や保証体制も自ら構築する必要があります。

互換バッテリーとは、純正バッテリーを別の事業者がそのまま製造したものではなく、純正品と同じ接続形状や基本的な動作を再現した別製品です。外観や装着方法が似ていても、内部構造や保護制御、放電性能まで純正品と同じとは限りません。

今回の記事では、こうした電動工具用互換バッテリーを取り巻く法制度や安全性、容量表示、事故時の補償、価格構造などを整理し、現在抱えている問題と今後求められる電動工具互換バッテリー市場の在り方について考えていきます。

互換バッテリーの製造や販売は違法ではないのか?に対する考え方

互換バッテリーについては、純正メーカーの許可を得ずに製造・販売していることから、「互換品そのものが違法なのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、特定メーカーの製品に対応する第三者製の消耗品や交換部品を製造・販売すること自体を一律に禁止する法律はありません。

分かりやすい事例が、現在も広く販売されているプリンタ用の互換インクです。プリンタメーカーとは関係のない事業者が、キヤノン・エプソン・ブラザーなどのプリンタに対応するインクカートリッジを独自に開発し、純正品とは異なる商品として販売しており、これに対する権利侵害に対する裁判も過去何度か発生してします。

互換品のありかたをめぐる事例としては、2021年9月30日に東京地方裁判所で判決が言い渡された、エレコムとブラザー工業の訴訟があります。この事例では、ブラザー工業が一部のプリンタについてカートリッジの判定方法を変更し、それまで使用できていたエレコム側の互換インクカートリッジを認識しにくい仕様としました。

判例では、認識し難くする設計変更に具体的な技術上の必要性が認められず、互換品メーカーに対して新たな開発を強いることで販売を困難にする目的があったと判断されています。その上で、純正カートリッジの購入を事実上余儀なくさせる行為は、独占禁止法上の抱き合わせ販売に当たるとし、エレコムが請求した損害賠償の一部を認めています。

この判決は、すべての互換インクの製造・販売を認めるものではありません。しかし、プリンタ本体メーカーと互換インクメーカーが消耗品市場において競争関係にあることを前提とするもので、合理的な理由なく互換品を排除する行為が独占禁止法上の問題になり得ることを示した事例です。

電動工具用の互換バッテリーについても、基本的な考え方は同じと考えられます。

特定メーカーの電動工具に装着できるというだけで、第三者がバッテリーを製造・販売することが直ちに違法となるわけではありません。純正品とは異なる事業者の商品であることを明示し、国内の安全規制を満たした上で有効な知的財産権を侵害しない構造として製造されていれば、互換バッテリーという製品自体には販売できる余地があると考えています。

PSE対象化で進んだ互換バッテリー周りの法整備

リチウムイオンバッテリーが電動工具に採用され始めた当初、電動工具用バッテリーパックは電気用品安全法、いわゆるPSE制度の規制対象には含まれていませんでした。

しかし、ノートパソコンや携帯電話などに搭載されたリチウムイオン蓄電池の発火・発煙事故が増加したことを受け、2008年11月20日から一定の条件に該当するリチウムイオン蓄電池が「特定電気用品以外の電気用品」に追加されました。これにより、電動工具用バッテリーもPSE制度の対象となっています。

さらに、互換バッテリーに関する重要な改正として、2022年12月28日に電気用品安全法におけるリチウムイオン蓄電池の技術基準が見直されました

それまでリチウムイオン蓄電池は、国内独自基準である「別表第9」または、国際規格に対応した「別表第12」のいずれかを用いて適合確認を行うことができました。

2022年のリチウムイオンバッテリー保護技術としては、国際規格IEC 62133-2で定められた各電池ブロックの電圧監視が一般的となっており、当時から既に多くのバッテリーパックが「別表第12」に準拠するものとなっています。(ただし、中国認証機関におけるPSE試験が別表第9で行われたために別表第12として再試験を行った事例は存在します)

一方、当時流通していたマキタ用互換バッテリーの保護は「別表第9」を基準とする保護基板であり、設計レベルで各電池ブロックの電圧を個別に監視していないものが数多く見られました。こうした保護基板は一部の電池ブロックに過充電が生じる可能性があり、安全面でも懸念の残るものでした。

これは筆者の推測となりますが、改正時の経済産業省資料で特定のメーカー名こそ挙げていないものの、この改正は、電動工具やコードレス掃除機向けの非純正バッテリーで発火事故が相次いでいたことが背景にあると考えています。

市場流通の実態も踏まえると、リチウムイオンバッテリー保護が不十分なマキタ・ダイソンの流通量の多い製品向けに販売されていた互換バッテリーへの対策という側面が強く、事実上の非純正バッテリー対策と捉えることができます。

画像引用:非純正リチウムイオンバッテリーの事故について│nite

このように、互換バッテリーを取り巻く法制度は、リチウムイオン蓄電池のPSE対象化と別表第12への技術基準の一本化によって段階的に強化されてきたことになります。

法整備だけでは判断できない電動工具特有の安全性

PSE制度の対象化と技術基準の見直しによって互換バッテリーの安全性は以前より向上しています。しかし、PSE適合だけを理由に、電動工具用バッテリーとして安全な製品だと判断することはできません

電動工具用バッテリーは、モバイル機器などに使われる一般的なリチウムイオンバッテリーと異なり、求められる性能が大きく異なります。

例えば、高負荷時にはモータへ大電流を供給する必要があり、充電時には短時間で多くの電力を受け入れる急速充電性能も求められます。そのため、搭載するセルには容量の大きさだけでなく、大電流で充放電しても発熱や電圧降下を抑えられるハイレート性能が必要です。

さらに、リチウムイオンバッテリーセルだけではなく、保護回路周りの配線やヒューズ容量、パック内部の冷却経路や落下、振動、粉じん、高温・低温などの耐久性、そして工具本体、バッテリー、充電器を一体のシステムとして制御することも重要です。純正バッテリーは、工具側とバッテリー側の保護機能を組み合わせ、過負荷や温度上昇などの異常時に出力や充電を停止するような制御も必要です。

PSEは、対象製品を製造・輸入する事業者に技術基準への適合確認や検査記録の保存などが義務付けられ、万が一の場合では事業者に対して責任を求める制度となっています。ただし、PSEは、特定の電動工具で発生する最大電流への耐性やメーカー独自の急速充電、長期間の振動・落下耐久性、製品との通信互換性まで保証する制度ではありません。

したがって、PSE適合は国内で販売するために必要な最低条件ではあっても、電動工具用バッテリーとしての安全性を全面的に保証するものではありません

容量詐称を十分に取り締まれない現状

互換バッテリーの問題として代表的な問題とされているのが、製品に表示された容量と実際に取り出せる容量が一致しない「容量詐称」です。ケースやラベルには「6.0Ah」「9.0Ah」と大容量を謳いながら、実測すると表示値を大きく下回る製品も見られます。

リチウムイオン蓄電池は、PSE表示とともに定格電圧や定格容量を表示する必要があります。

しかし、PSEは主に製品の安全性と事業者の責任を定めるものであり、国や第三者機関が市場に流通するすべての製品を購入し表示容量どおりの性能があるかを一台ずつ確認する制度ではありません。PSEマークも国から取得する認証ではなく、製造・輸入事業者が技術基準への適合確認や自主検査などの義務を果たした上で表示するものです。

表示容量が実際の性能を著しく上回っている場合は、商品の品質や性能を実際より優良に見せる表示として、景品表示法上の優良誤認に当たる可能性があります。消費者庁は性能表示の根拠を確認する必要がある場合、事業者に合理的な根拠を示す資料の提出を求めます。

したがって、容量詐称を問題にできる法律が存在しないわけではありません。一方で、個々の互換バッテリーについて虚偽表示を立証し、継続的に取り締まることは容易ではないのが実情です。

近年はこの問題が広く知られるようになり、販売ページのレビューや動画配信者による分解・検証も行われています。しかし、実際にバッテリー容量を測定するユーザーは一部に限られ、搭載セルのラベル表記だけを確認して、製品の容量表示を信用してしまうケースもあります。

特に、セルのラベルが偽装されている場合や、中古セルを再利用している場合には、ラベルに記載された容量も信用できません。購入者が表示容量の正しさを確認するには、満充電状態から終止電圧に達するまで実際に放電し、その間の電流と時間を積算して容量を測定する必要があります。

このように、著しく不正確な容量表示は既存法令の対象となり得る一方、現実として全ての容量偽装品を取り締まることは難しく、より難解な解析を必要とするハイレートセルの判別や充放電制御の市場での検証はほぼ不可能であると考えています。

PL保険に加入していても安心とは限らない

互換バッテリーの販売ページでは、安全性や補償体制を示す材料として「PL保険加入済み」と記載されていることがあります。しかし、販売事業者がPL保険に加入しているからといって、製品事故が発生した際に購入者の損害が無条件で補償されるわけではありません。

PL保険とは、製造・輸入・販売した製品によって第三者の身体や財産に損害を与え、事業者が法律上の損害賠償責任を負った場合に、その賠償金や争訟費用などを補償する事業者向けの保険です。購入者自身を直接保護する保険ではなく、あくまで販売事業者が負う賠償責任に備えるための制度となります。

また、PL保険の前提となる製造物責任法では、製品の欠陥によって生命、身体または財産に損害が生じた場合、製造・輸入事業者などに対して損害賠償を求めることができます。事業者側の過失を証明する必要はありませんが、基本的には製品に欠陥があったこと、その欠陥によって事故が発生し、損害につながったことを示す必要があります。

電動工具用バッテリーの事故では、この欠陥と因果関係の確認が難しくなる場合があります。発火によってバッテリー内部のセルや保護回路、配線、工具本体、充電器まで焼損すると、事故後の状態から出火原因を詳細に特定することが困難になるためです。

実際に補償を求めるためには、購入履歴や製品の特定、事故時の使用状況、工具・充電器との組み合わせ、焼損品や写真などの証拠を残し、販売事業者や保険会社との間で事故原因と損害額を確認する必要があります。

PL保険は、万が一の際に販売事業者が賠償責任を果たすための備えとしては重要な事には間違いありません。

しかし、事故後の原因究明や、製品の欠陥と事故との因果関係の確認が必要になる以上、「PL保険があるから互換バッテリーでも安心」と判断することはできません。製品を選ぶ際には、保険加入の有無だけでなく、販売事業者の実態、保証対応、製品情報、事故時の連絡・回収体制まで確認する必要があります。

また、普段から使用しているバッテリーや充電器、使用状況を把握し、異常発生時の記録や証拠を残しておかなければ、事故原因の確認が難しくなり、結果としてPL保険による補償を受けるまでのハードルは極めて高くなってしまうと考えた方がよいでしょう。

3,000円台の互換バッテリーはなぜ成立するのか

電動工具用の互換バッテリーの中には、通販サイトで1個3,000円台から販売されていることがあります。

純正バッテリーが1万円を超える場合も珍しくないことを考えると魅力的な価格に見えます。しかし、この価格差は単に純正メーカーの利益やブランド料だけによって生じているものとは考えにくいものになります。

バッテリーパックを製造するには、リチウムイオンセルだけでなく、保護基板、端子、配線、ヒューズ、ケース、セルホルダーなどの部材が必要です。さらに、セルの選別や組み立て、溶接、完成品検査、法令対応、輸送、販売手数料、保証対応などの費用も発生します。

通販サイトで3,000円台の商品として販売する場合、その金額のすべてを製造原価に充てられるわけではありません。販売事業者や流通事業者の利益、通販サイトの手数料、国内外の輸送費などを差し引けば、製造段階で使用できる費用は販売価格よりも大幅に低くなります

限られた原価の中で低価格を実現するには、安価なセルを採用するほか、保護基板や端子、配線、ケースなどの部材費を抑え、検査工程や品質管理、保証対応にかかる費用を削減する必要があります。大量生産や中間流通の簡略化によって価格を抑えられる部分はあるものの、それだけで純正品との大きな価格差を実現することは難しいと考えられます。

特にコストへの影響が大きいのが、搭載するリチウムイオンセルです。電動工具には大電流放電に対応したハイレートセルが必要ですが、容量や生産性だけを重視した安価なセルやメーカー・性能が不明なセルを使用すれば、部材費を大きく削減できます。一方で、高負荷時の電圧降下や発熱の増加、リチウムイオンセルの品質の低下などは十分想定される要素となります。

加えて、セルの選別や組み立て後の検査を簡略化すれば、製造コストと時間を削減できます。しかし、容量や内部抵抗のばらつきが大きいセルを同じパックに組み込むと、使用を重ねるうちに電池ブロック間の電圧差が広がり、寿命低下や異常発熱につながるおそれがあります。

とは言え、低価格な互換バッテリー全てが危険であるわけではなく、昨今は中国製セルや保護回路の品質向上、製造規模の拡大、広告費や流通コストの削減などによって純正品より安価に製造できる余地はあります。

しかし、高品質なハイレートセルを採用し、大電流に耐える端子や保護回路の部材を使用した上で、セル選別、完成品検査、落下・振動試験、長期保証、事故対応まで純正品同等に行いながら3,000円台で販売することは現実的に難しいと考えられます。

懸念しなければいけないのは、3,000円台の互換バッテリーであっても、PSEの技術基準を満たしPSEマークを付けるのは決して不可能ではない点です。

3,000円台という価格には、それを成立させるために削減された部材や工程がある可能性を考慮する必要があります。ラジオやライトなどの消費電力が小さい機器では問題なく使用できたとしても、グラインダや丸ノコなどの高負荷な電動工具で、同じように安全かつ安定して使用できるバッテリーパックであるとは限りません。

電動工具バッテリーを真面目に取り扱えば純正価格が妥当になる

純正の電動工具用バッテリーは、容量によっては1個1万円を超え工具本体に近い価格となることもあります。リチウムイオンセル単体の価格と比べれば割高に見えますが、バッテリーパックを安全に製造・販売し、長期間にわたって供給するには、セル代以外にも多くの費用が必要となります。

電動工具用バッテリーには、急速充電と大電流放電に耐えられる高品質なハイレートセルが必要です。

同じ容量のセルでも、最大放電電流、内部抵抗、発熱特性、充放電サイクル寿命は異なります。セルメーカーや型式を指定し、安定した品質のセルを継続的に調達するには、性能の不明な安価なセルを使用する場合よりも高いコストがかかります。

こうしたコスト構造は、国内工具ブランドが販売する独自バッテリーの価格からも読み取れます。

例えばKTCは、18V-5.0Ahのバッテリーパック JBE18050Lを小売参考価格28,600円に設定しています。マキタ純正の18V-6.0Ahバッテリ BL1860Bは24,400円であり、メーカー公表価格で比較すると、KTCの独自バッテリーはマキタ純正品と同等どころかそれを上回る価格です。

また、VESSELがSP AIRブランドで展開する18.5V-5.0Ahバッテリー SP-80185は、2026年7月時点の実売価格はおおむね12,000~15,000円台です。マキタ純正のBL1860Bも販売店では14,000~17,000円前後で流通しており、両者の実売価格には大きな差がありません。

KTCやVESSELのバッテリーは、外形上はマキタ18V系に近いスライド式形状を採用しており、マキタ純正製品にも装着が可能です。そのため、一応の分類としてはマキタ18V互換バッテリーとしても分類できる製品となります。

ここで注目すべき点は、国内企業が自社ブランドを掲げ、製品仕様を明示し、正規の流通、保証、問い合わせ、不具合対応まで引き受けると、バッテリー価格は純正品と大きく変わらない水準になることです。純正メーカーでなくても、適切なセルや保護回路を採用し検査と保証体制を整えれば、極端な低価格を維持することは難しくなります。

製品を市場へ出した後にも、販売店への供給、倉庫での保管、問い合わせ対応、保証交換、故障解析、製造ロットの追跡、不具合発生時の回収や告知などの費用が発生します。

それでも、高品質なセルの調達から設計、組み立て、検査、法令対応、流通、保証、事故対応までを真面目に行えば、バッテリーの販売価格は必然的に高くなります。第三者メーカーが純正品と同等の性能、安全性、販売後の対応を目指した場合、価格は純正品よりわずかに安い程度か、製造規模によっては純正品を上回る水準になることもあります。

純正バッテリーの価格は、単なるセルと樹脂ケースの組み合わせによって決まるだけではありません。

電動工具で繰り返し使用できる性能と安全性を確保し、不具合発生時に製品を追跡して責任を負うための費用まで含まれています。国内ブランドの独自バッテリーが純正品と近い価格帯になる実例を踏まえても、純正価格には相応の妥当性があると考えています。

まとめ:互換バッテリーの問題は「互換」ではなく品質の不透明さと真面目に作った場合の存在意義

電動工具用の互換バッテリーは、純正メーカー以外の事業者が製造・販売しているという理由だけで直ちに違法品や危険な製品となるわけではありません。適切なセルや保護回路を採用し、国内法令に適合した上で、十分な検査や保証体制を整えている製品であれば、純正品以外の選択肢として市場に存在する余地があります。

一方、現在の電動工具互換バッテリー市場では、購入者が製品の品質を判断するための情報が十分に開示されていません。PSEマーク、表示容量、PL保険への加入などは一定の判断材料になりますが、それだけで電動工具用バッテリーとしての性能や安全性が保証されるわけではありません。

また、販売ページの説明や外観だけでは、高品質なハイレートセルを使用した製品と、安価なセルや簡略化された保護回路を使用した製品を見分けることは困難です。国内事業者が販売する製品であっても、実際の製造元や品質管理方法、事故発生時の対応体制が不明確な場合があります。

互換バッテリーの本質的な問題は、「互換品であること」ではなく、性能や安全性に関する情報が不透明なまま、価格と表示容量を中心に比較されていることです。高品質な互換品と性能や安全性に関わる部材や工程を削って低価格化した製品が同じ売り場で同じように販売されているため、購入者が適切に選別することは容易ではありません。

安価な互換バッテリーを選ぶことは、購入者に認められた選択肢の一つです。しかし、その価格差が、どのような部材、製造工程、品質管理、保証体制の違いによって生じているのか判断できない以上、純正品と同等の性能や安全性を当然に期待すべきではないでしょう。

筆者は、こうした電動工具互換バッテリー市場の根本的な問題を、現状の仕組みのまま完全に解決することは難しいと考えています。

当サイトVOLTECHNOでも、互換バッテリーの分解や性能測定を行い調査の結果、懸念点を記すことはあります。しかし、互換バッテリーの安全性や信頼性に対して太鼓判を押すことは決してありません。

その背景として、バッテリーパックの安全性と信頼性を適切に評価するには、充放電測定や試験サンプル数1個で行える試験だけでは不十分なためです。

長期間の耐久試験、温度試験、落下・振動試験、過充電や短絡を想定した破壊試験などを行い、複数の試験品を用いて個体差や製造品質まで確認する必要があります。十分な試験データやテストレポートがない状態で安全性を判断するには、膨大な検証時間と測定設備に加え、10個程度では済まない数の試験サンプル品が必要になります。これは、一般的なWebメディアが行う製品検証の範囲として、費用面でも設備面でも現実的ではありません。

バッテリーの内部抵抗を測定するバッテリテスタ HiOKI BT3554。
互換バッテリーの分解調査を行うだけの測定器として使うには結構良い値段のする測定機器でもある。最近は中国ブランドの低価格な測定器もあるが、信頼性としてはいまいち。

さらに、製造元や輸入事業者が一定しない中国ブランドや輸入販売を中心とする国内ブランドの製品では、設計や部材の変更が十分に管理されていない可能性もあります。

同じ商品名や外観で販売されていても、製造時期によってセル、保護基板、配線などが変更されれば、過去の検証結果をそのまま当てはめることはできません。一度高く評価した製品であっても、その後の仕様変更によって評価が意味を持たなくなるケースも想定されます。

電動工具互換バッテリーが、純正品より大幅に安価でありながら、高い安全性と信頼性を備えた製品として広く普及するには、次世代二次電池の登場や、セル・保護回路・製造技術のさらなる技術革新が必要であり、製造原価を極端まで希釈化し、価格の大部分をブランドや利益にする必要があります。ただし、その実現にはまだ相応の時間を要するでしょう。

筆者としては電動工具互換バッテリーそのものの存在を否定するものではなく、価格や用途に応じて製品を選びたいユーザーにとってサードパーティは必要な選択肢の一つであり、高品質な互換バッテリーに対して需要がある点も理解はしています。

一方で、十分な部材、検査、品質管理、保証体制を備えて真面目に製造すれば、互換バッテリーの価格は純正品に近づきます。その結果、価格差が小さいにもかかわらず、工具や充電器との適合性、長期供給、保証、事故対応では純正品に及ばない可能性も十分に考えられます。

こうした市場の価格構造と安全性を踏まえると、適切に作られた電動工具互換バッテリーには一定の価値があるものの、純正品に対する価格面での優位性や代替品としての存在意義は、それほど大きくないと考えているのが筆者の率直な見解です。

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